天気が良く、風も波もない日はキャストもしやすく釣り日和に思える。

 しかし凪に近いような穏やかな海、また「ベタ凪」と呼ばれる無風で水面が鏡状になった海では、釣果が全く出ないことも多い。それはいったいなぜなのだろうか? 今回は波の有無が釣果に影響を与えるかについて、筆者の経験を交えた考えを紹介したい。

■波はどう生まれるのか

海上で吹く風が波を作り出す

 波は海上を吹く風が作り出している。これを一般的に風波(かぜなみ)と呼ぶ。風波が伝わることによって生まれる海の揺れが「うねり」となる。とても穏やかな日なのに大きな波が押し寄せてくるのは、沖合で吹く風が波を発生させていることになる。

 また、波間(なみま)は、波と波の間の間隔のことを指し、一般的にはこの間隔が狭いほどうねりも強く潮が速い状況が多く釣りづらくなる。波は風の影響を受けるので注意が必要だ。沖から陸へ風が吹いているときには波が高くなり、陸から沖へ風が吹くときは波が低くなる。

■ベタ凪は釣れにくく、多少の波があった時のほうが釣果は出る

凪だったこの日は釣果を出すことが出来なかった

 結論から述べると、ベタ凪では釣れにくく、多少の波がある時のほうが釣れやすい。

 実際、遊漁船を営む知人は「多少波っけがあるとお客さんに釣って帰ってもらいやすい」と話している。それだけ波は、釣りにとって重要なファクターなのだ。ただし「波がある」と言っても限度があり、気象予報の波予測では1.5mまでを目安にしてほしい。

●理由1:魚がエサやルアーに違和感を感じやすい

 凪の状態では水中から水面上がおそらくはっきり見える状態になる。海岸を歩いていると小魚が人影に気付き、ものすごい速さで沖へ逃げていくことがある。またほとんどの魚には外敵がいるので、海中がクリアで「ベタ凪」と呼ばれる穏やかな海況では魚はじっと身を潜めていると言われている。こういったことから魚の警戒心は凪の時に高まると考えられている。

●理由2:海中の酸素量が減り、プランクトンが動きづらい

 真夏の高水温の時期でなくとも、凪で海が穏やかな時は海中の酸素量が低下し、プランクトンが減少する。そのため小魚が動きにくく、それを追う中型・大型魚の活性も低くなる。とはいえ水温が極端に高い夏や極端に低い冬より、水温が比較的安定している春や秋のほうが凪の状況でも釣果は期待できる。

■波があると釣れやすい要因は?

波高1.5mでの釣果

 それでは凪とは反対に、波がある時に釣れやすい理由を考えてみよう。

●理由1:プランクトンや小魚が散りやすく、魚が浅場にやってくる

 波が海をかき回すため、プランクトンが広範囲に散らばって浅場にも魚が集まりやすくなる。このため、凪の時には身を潜めやすいポイントや水温が低い沖合を好む魚も、接岸してくることが多くなる。

●理由2:ルアーや仕掛けが波にカモフラージュされ、反応が良くなる

 適度な波は仕掛けやルアーをカモフラージュしてくれるので、魚に違和感を与えづらくする。こういった状況下では、エサを探して活発に泳いでいる魚の目の前にエサやルアーを見せることができれば、釣れる可能性は高い。適度な波はあったほうがアタリは多く、警戒心が薄れることで釣果が多くなるのだ。

■波がある時の釣りのコツ

●リールを巻く速度を上げる

 波が多少高い日は潮流が速く、風が吹いている場合が多い。そういった状況下では仕掛けが流されやすくなかなか狙ったポイントに仕掛けを届けることが難しくなる。そんな時はリールを巻く速度(リーリングスピード)を上げてみよう。ルアーであれば泳ぎを竿先で感じられるくらいまで上げれば良いし、エサ釣りの場合は仕掛けが流されないようにオモリやキャストポイントを調整することで釣果アップにつなげられる。

●水中に潜りやすいルアーを使う

ルアーの選び方も重要なファクターだ

 あえて割れる波間をゆらゆらとルアーをアクションさせて釣るような釣法もなくはないのだが、かなり上級者向けだし、使用シーンは限定される。

 おすすめのアプローチとしては、比重が高いタングステン製のジグや、リップが長いミノーを使用することで、波っ気のある日でもルアーをしっかり泳がせることができるので魚が気付きやすくなる。

 ただし、これはルアーがまったく波になじまず飛び出してしまう時の話で、多少の波でもルアーはしっかり泳ぐ。臨機応変に対応するのが良いだろう。