■中腹の花畑はいずこへ

今回は草スベリコースを登ったが、草が生い茂る様子はなく、短い草丈の斜面のところどころに「ハクサンフウロ」や「ウメバチソウ」などがちらほらと咲いていた。シカの影響が大きいと聞いていた通りだった。17年前は右俣コースを登ったのだが、「シナノキンバイ」や「ハクサンイチゲ」、「ミヤマキンポウゲ」など、沢山の種類の花畑があった。

草スベリコースも同様に花畑があると聞いていたので、花畑の変貌ぶりにかなりがっかりした。また、草スベリコース上部にはシカよけの柵があり、中は草が生い茂っていた。
■肩の小屋がリニューアル

17年前にお世話になった「肩の小屋」がリニューアルされていた。当時は天候が悪いうえに小屋は人でいっぱいで、母屋ではなく離れのような場所に泊まった。夜中まで雨風が小屋に吹き付け、寒さで寝られず震えていたが、いつの間にか眠っていた。急に暑くなって目が覚めて外に出ると、天の川が大きく頭上で輝いていたのを憶えている。

今回は、肩の小屋に立ち寄っただけで泊まらなかったが、3階建てになって快適そうだった。機会があれば今度は母屋に泊ってみたい。
また、バスの発着所兼登山口である広河原には「広河原山荘」が2022年6月にリニューアルオープンしていた。バスやタクシーを待つ間に食事や買い物できる便利な施設が出来て嬉しい。

■17年を経て、変わらなかったもの

3日目、北岳山荘から山を下りる日、澄んだ空に南アルプスの山々と富士山が姿を見せてくれた。大きくゆったりとした山容の間ノ岳が、緑の裾を広げている。中白根山(なかしらねさん)まで少しだけ足を延ばすことにした。

南側から見る北岳は美しい円錐型をしていて、筆者のお気に入りだ。秋にはところどころ、赤や黄色に染まるのもたまらなく美しい。
そして、中白根山から間ノ岳へ向かう登山道の花畑を少しだけ眺めた。低い背丈の高山植物が群落を作り、斜面を彩っていた。

そしてまた北岳山荘に戻り、今度はトラバース道を経由して八本歯のコルから大樺沢伝いに下山した。

北岳山荘からは夏の朝の清々とした空気の中、青く浮かぶ富士山を見て、急に泣いてしまった。
ああこれは、以前見た富士山だ。「北岳に来たんだなぁ」としみじみ思った。本当はこんなにも北岳に来たかったのだと、今頃気が付いた。

傾斜のきついトラバース道にやってきた。久々に来るとかなり怖い。お祈りしながら通る情けなさだが、来た甲斐のある花畑を見ることができた。

気温が上がり、花の時期が変わってしまったり、また花畑が消えてしまったところもあったが、また来ることができた喜びでいっぱいの、思い出深い山行となった。
高低差多し、危険箇所あり、簡単な気持ちで来てはいけない山ではあるが、感動ある景色や経験を与えてくれる。体力をつけて、天候をよく見据えて北岳に会いに行って欲しい。
【今回のコース】
【1日目】広河原(10:00)⇒白根御池小屋(13:00)
【2日目】白根御池小屋(6:30)⇒肩の小屋(10:00)⇒北岳山頂(11:20)⇒北岳山荘(12:30)
【3日目】北岳山荘(6:00)⇒中白根山(6:30)⇒北岳山荘(7:00)⇒※トラバース道から断続的に撮影⇒八本歯のコル(9:00)⇒白根御池小屋(12:00)⇒広河原(14:00)