■小富士遊歩道
ここからは30分ほどの樹林帯を歩くことになる。樹林帯と聞くと蒸し暑さを想像するが、標高2,000mに近いこともあり、夏場でも涼しく快適に歩けるだろう。
ダケカンバやシラビソなどの森の中を進んでいくと、須走馬返しへと向かう下山路への分岐が見えてくる。道案内は新しくしっかりとしているが、下山路は途中途中で不明瞭な箇所があり、中級者向けとなるので不用意に入り込まないことをおすすめする。
ただ、途中で富士グランドキャニオンと呼ばれる奇景を眺められる珍しいルートでもあるので、十分にルートファインディング力を養ったうえで、チャレンジするのもいいだろう。
下山路への分岐を通過すると、その後は一本道となる。緑豊かな森林の中を辿って行くといきなり視界が開け、砂礫の丘とケルン(円錐状の石組み)が目に飛び込んでくる。小富士山頂に到着だ。祠の埋まったケルンまで進んで山頂方面に振り向くことで、巨大な富士山山頂を至近に拝める。
目を凝らすと、須走ルートや吉田ルートの山道を確認できる。仲間内や家族で探してみるのもよいだろう。
■小富士山頂
小富士の山頂からの眺めは、正面東方向に、茄子のような特徴的な形の山中湖が見えるので、これを起点にしよう。
山中湖から北へ目を向けると、御殿場市街地が広がっているのがわかる。そこから更に北へ目を移すと、吉田市街地と河口湖が確認できるはずだ。運がよければ河口湖の奥に、秩父山地や八ヶ岳連峰といった山々を眺めることもできる。
南へ目を向けると、箱根の山々と相模湾。更に南へ目を向けると、三島市街地に愛鷹山を確認できる。天候に恵まれれば、伊豆大島や伊豆半島の天城連山まで見通せる。
砂礫の丘はそのまま座っても問題ないが、レジャーシートや携帯座布団などを持っていくと快適だ。ゆっくりと日向ぼっこして過ごすとすばらしく気持ちがよいので、ぜひ試してみてほしい。
また今回のコースは片道30分と短い距離ではあるが、標高2,000mを歩く立派な登山だ。天候や運動量により汗をかく量は変わるため、衣類の脱着での温度調節が基本。小富士の周囲は樹木がなく、直射日光や強風が直接肌に当たる体感温度の変化が大きな場所になるので、複数の衣類を持っていこう。
なお、衣類は乾きやすい化繊素材がおすすめ。綿素材のものは、汗で濡れると乾くまでに時間がかかり、体を冷やす原因になる。悪くすると低体温症を発症するリスクがあるため、避けたほうがよいだろう。 帰路は来た道を引き返すだけ。バスの時間と睨めっこしつつ、余裕ある行動を心がけよう。
【コースタイム】
所要時間(往復):約1時間
富士山須走口五合目〜(約10分)〜小富士遊歩道入口〜(約20分)〜小富士山頂〜(約20分)〜小富士遊歩道入口〜(約10分)〜富士山須走口五合目
【アクセス】
JR御殿場駅富士山口バスターミナルより季節運行バスにて約1時間
※運行期間(7月〜9月の富士山開山時期:夏季ハイキングバス)