■初挑戦の低山で道迷い。まだ大丈夫と考えて、道迷いの深みへはまる
山で道に迷った経験はあるだろうか。
実際に迷った筆者は、迷っていることを自覚できないというよりも、「まだ大丈夫」と事態の進行をストップできない状態に陥った。初めて歩いた山での下山中に地図を読み間違え、さらに「きれいな道が正しい道」と思い込み、分岐を誤った方向へ進んでしまったのである。
一向に登山口に辿り着けない。それでもひたすら道なりに進み続け、気づけば九十九折の道を登っている状況になっていた。
幸いだったのは、この時に迷った際の鉄則である「下らずに登る」を偶然にも実行できたことだ。
高い位置から送電線や川、橋などを発見し、明らかに進行方向がずれていることに気付くことができた。そういった現在地を特定しやすいものを発見して、自分がどこにいるか把握できたため、無事に下山ルートへ戻ることができた。
自分は大丈夫という慢心や思い込みからの失敗だった。
●大丈夫だと思い込む、正常性バイアスに要注意!
筆者の道迷いを引き起こした原因は、地図の読み間違いと思い込みによるところが大きい。
地図を平面的にしか読めず地形と合わせてのルート選定ができないだけでなく、正規ルートがよりきれいに整備されていると思い込んで、地元の方が利用する作業道へ迷い込んだ。
ルートを間違えて、正常性バイアスに陥ったことも状況を悪化させた。
正常性バイアスは日常の中では精神的な安定を保つ心理作用だが、危険が迫っていても察知を鈍らせ、事態を悪化させてしまうことがある。
今回の筆者の例では思い込みがその錯誤を増長し、道迷いの深みにはまった。
この失敗以降は等高線、記号をしっかりと読み解く読図の習得に力を入れ、地図を立体的に読むことで変化に気付けるように注意している。また、地図を読む際には今いる地点だけでなく、「これから歩く場所」をしっかりと先読みすることで道迷い防止に努めている。
筆者がこの道迷い以降実践している防止方法としては、分岐のたびに地図とコンパスを使用して進行方向を確認している。
ただ地図の原本は大きく、きっちりと折り目がついているので取り出すのが面倒だった。そのため、必要な部分をモノクロとカラーで1部ずつコピーして使用し、原本はコピーの紛失などに備えてバックパックにしまっている。
白黒コピーには歩く予定のコースをマーキングしたり、当日はメモを書き込んだりして、コピーは地図読み専用として使い、丁寧に山の様子を観察する。それだけのことで思い込みで間違った道へ進むということはなくなった。
■セオリーになるには理由がある
今回紹介した失敗から実行した改善策は、どれも登山の手法としては当たり前で、セオリーに則ったものばかりだ。しかし、登山で現在常識となっているものは有用だからこそ、共有されているものなのだと筆者は身をもって知ることとなった。
この記事を読んでいただいた方には、筆者の失敗を反面教師とすることはもちろん、なぜ登山における常識が存在するのかと考えていただければ幸いだ。