夏に比べて最大で5時間も日照時間が短くなると言われる冬の登山は、時間にシビアにならざるを得ない。夏場であれば明るくなってから出発しても日が暮れる前には帰ってくることができるが、冬にはそうもいかなくなる。行動時間の長い行程を歩くには日が昇る前に出発し、日が沈む時間を考え、ヘッドライトは常備するのが基本だ。

 しかし、コースタイムの短い山であれば話は別である。明るくなってから出発しても、時間や心にゆとりがもてるはずだ。今回は都心から日帰りできるおすすめの低山を3つ紹介したい。いずれも登山口までのコースタイムが往復3時間以内と短く、日照時間の短い冬でも余裕をもって登ることができるだろう。

■登山口から往復で3時間!  源頼朝ゆかりの地「神奈川県・城山」

 「城山(しろやま)」と聞くと、どこの山を連想するだろうか? 答えは人それぞれ違うかもしれない。それほどまでに全国各地に多くの城山がある。

 紹介する城山は神奈川県湯河原町にある城山だ。山頂からは相模湾を一望することができ、天気がよければ伊豆大島も見ることができる。

城山山頂はスペースが広く、相模湾を眺めながらゆっくりできる

 湯河原の城山は標高563mと高くはないが、見どころが多い。麓の幕山公園からスタートするのが一般的だ。幕山公園には約4000本の梅が植えられており、2月上旬から3月の中旬にかけて梅の花を楽しむことができる。

幕山公園の梅の木。早いものは1月から咲き始める

 幕山公園では例年イベントが行われ、2024年2月3日から3月10日までは「梅の宴」が開催される。開催に合わせて梅の花見とハイキングにいくのもいいだろう。

 城山へと向かう道中に鎮座しているのが、源頼朝ゆかりの地として知られている「しとどの窟(いわや)」だ。しとどの窟は、鎌倉幕府の開祖・源頼朝が1180年に石橋山の戦いに敗れ、平氏から身を隠したと言われる洞窟で、大きな岩の下には土肥椙山観音像群(どいすぎやまかんのんぞうぐん)と呼ばれる20体以上もの石仏が並ぶ。

20体以上の石仏が並ぶ「しとどの窟」

 「しとど」とは小鳥のことで、源頼朝が洞窟に入る際、飛び立ったことから名付けられたそうだ。岩の迫力と石仏の数に圧倒されるので、ぜひ立ち寄ってみてほしい。

 幕山公園から城山へは往復で3時間ほど。早起きせずとも十分に時間に余裕をもって往復できるだろう。城山の付近は湯河原町や箱根、小田原など観光地にアクセスしやすいので、ハイキングと一緒に観光を楽しむのもおすすめだ。

●【MAP】幕山公園

アクセス:真鶴道路終点から幕山公園通り経由で8分(3.3km)

 

■登山口から往復で2時間!  2つの日本一を同時に見る「静岡県・達磨山」

 続いて紹介するのは、静岡県沼津市と伊豆市にまたがる達磨山(だるまやま)。標高982mの山で、登山道には背の高い木がなく、どこからでも見晴らしがいいのが特徴だ。

戸田峠から達磨山へ向かう登山道。木々が少なく、見晴らしがいいが強風に注意

 見晴らしのいい登山道からは駿河湾と富士山を望むことができ、駿河湾は日本一「深い湾」、富士山は「日本一高い山」として、同時に2つの日本一を望むことができる。

達磨山の登山道から望む駿河湾と富士山(右奥)

 戸田峠(へだとうげ)からスタートすると往復で約2時間あれば帰ってくることができる。歩き足りない場合は金冠山(きんかんざん)にも足を延ばせば楽しめる。汗を流した後は修善寺エリアで温泉に浸かり、疲れを癒してから帰るのもいいだろう。

●【MAP】戸田峠駐車場

アクセス:伊豆縦貫自動車道・修善寺ICから県道18号経由で17分(11km)