2月にも入ると徐々に日が長くなり始めていることに気づく。しかし、標高の高い山々は深い雪に覆われ、無条件には入山を許さない厳しい環境である。

 新緑の山歩きができるようになるまでは今しばらく待たなければならないが、首都近郊は冬でも楽しむことのできる山が豊富だ。今回は神奈川県の人気エリア「丹沢山地」の中でも特に人気の高い大山(おおやま)を紹介したい。

■阿夫利神社が鎮座する大山

隣の三ノ塔から見た大山

 大山(おおやま)は神奈川県伊勢原市、秦野市、厚木市にまたがる標高1,252mの山で、丹沢山地の東端に位置し、日本三百名山や花の百名山に選定されているほか、関東百山、日本百低山などにも名を連ねている。

 信仰の山としても知られていて、中腹に「大山阿夫利神社下社(おおやまあふりじんじゃしもしゃ)」、山頂には「大山阿夫利神社本社」が鎮座している。大山は「雨降山(あふりやま)」「阿夫利山(あふりやま)」の別名を持ち、大山および阿夫利神社は雨乞いの神として、農民の信仰を集めていたそうだ。

 麓のバス停から大山阿夫利神社下社までのアクセスが容易なケーブルカーもあることから、通年多くの観光客で賑わう人気の山だ。

■静かな山歩きを楽しめる穴場ルート!

 大山は阿夫利神社下社のあるケーブルカーを利用して登る人が多く、人気のルートとなっているが、今回紹介するのは別ルートだ。

 丹沢表尾根の起点ともなるヤビツ峠からは大山へと続く登山道が延びており、人気のケーブルカー側からのルートに比べ、静かな山歩きを楽しみながら山頂を目指せる。

ヤビツ峠にあるレストハウス。食事やお土産の購入ができる

 秦野市から宮ヶ瀬へと続く県道70号線をヤビツ峠と呼び、ヤビツ峠は丹沢表尾根の起点としてハイカーに人気の登山口。また「ヒルクライムの聖地」として多くのサイクリストにも愛されている峠だ。それだけではなく、長く続くワインディングロードは人気のドライブコースとしても知られている。

 ヤビツ峠のバス停には通年営業しているヤビツ峠レストハウスがあり、訪れた人たちの憩いの場となっている。今回紹介するヤビツ峠から大山へと続くルートは、レストハウスを横切って一気に山頂を目指す。

冬枯れした登山道は日が差し込んで気持ちがいい

 登山道は単調な登りが続くが、程よい間隔で呼吸を整えられる平坦なエリアがあるため、そこまで疲労を感じることなく登れるだろう。樹々の葉が生い茂っていたらひたすらに目の前の道を歩くしかないが、冬枯れした山は樹々の間から眺望を楽しめ、目で楽しませてくれる。

■ヤビツ峠からのルートでしか眺望できない富士山と丹沢の山々

 ヤビツ峠からのルートは静かな山歩きを楽しめることが魅力だが、もうひとつ、このルートならではの楽しみがある。それは登山道から、富士山と丹沢を代表する山々を望むことができることだ。

登山道から望む富士山と丹沢を代表する山々

 丹沢山地の東端にある大山からは隣の三ノ塔、塔ノ岳、丹沢山などを望むことができ、バックには富士山がそびえる。この景色はヤビツ峠から大山に登る者へのご褒美のような景色だ。

■山頂からの大展望はずっと見ていられる

 ヤビツ峠から大山山頂まではおよそ1時間、山頂直下までくると、山頂に鎮座する阿夫利神社本社へと続く鳥居が2つあり、鳥居をくぐると本社(山頂)が見えてくる。

山頂への入り口。阿夫利神社本社の標識がある

 山頂からは麓の秦野市街から、厚木市、横浜市、湘南エリアまで見渡すことのできる大展望が広がり、見るものを圧倒させてくれる。

山頂の標識。さえぎるものがなく、どこまでも続く大展望が広がっている

 一切さえぎるものがなく、関東平野を望むことができるのも東端に位置する大山ならではの景色と言えるだろう。山頂エリアにはいくつものベンチが設置されており、スペースも広い。気に入った場所を見つけてゆっくりと景色を満喫してほしい。冬は特に空気が澄んでおり、晴れた日には都心のビル群やスカイツリーなどを肉眼で見ることができる。

 山頂の標高は1,200mを超えているため、しっかりと防寒着を携帯すること。温かい飲み物や食べ物があると体の中から温めることができておすすめだ。冬枯れしている時期こそ低山は面白い。静かな山を歩いて大山を訪れてみてはいかがだろうか。

 下山については、マイカーで行くのであればヤビツ峠へのピストンルートになるが、公共交通機関であれば、下山は大山ケーブルバス停へ下山するのもひとつ。ヤビツ峠からよりもバスの本数が多く、帰路につきやすい。

●【MAP】ヤビツ峠レストハウス