■昔ながらの風情が残っている集落をのんびり歩いていると……

 10月初旬の波照間島はまだ日差しが強く、日中は海水浴も十分に楽しめる。ただ、朝夕には涼しい風が吹くので過ごしやすく、島猫散歩にはうってつけの時候だ。

 サンゴの石垣やフクギの屋敷囲いなど、昔ながらの風情が残っている集落をのんびり歩いていると、筋道3本に1本くらいの割合で猫に出会った。

 波照間の猫は目が合うと、じっとこちらを見つめてくる。人の姿を見ただけで逃げる猫や、目を合わせまいと逃げ腰の猫、目が合ったらすぐに寄ってくる猫などいろいろあるが、島猫たちの態度で、その島の人と猫との関係性がだいたいわかる。波照間島の猫はみな、人との距離感が絶妙だった。

声かけする私たちを何度も振り向きながら、「誰だっけ?」と確認する
縁側の上で寝ていた2匹。白猫はどうやら母猫のようだ
公園のベンチの下に寝そべり、しずかな視線だけを送っていた

 波照間島のある竹富町では、2022年の4月から「竹富町猫飼養条例」が変わり、地元のNPOの動物診療車が島々を回って、猫の不妊化手術やマイクロチップ挿入による飼い猫登録を進めている。今回出会った猫たちも、みなふっくらとしていたので、多くは飼い猫だったのではないかと思う。

 8年前にこの島に来た時には、特に猫を意識していたわけではなかったが、数匹の子猫を連れた痩せこけた母猫の姿が印象に残っていた。

 おぼろげな記憶を辿ってその場所を訪れてみると、いきなり2匹の子猫が飛び出してきて驚いた。

 まわりの風景は少し変わっていたが、母猫が子育てをしていたその場所で、今は別の島猫家族がその場所で暮らしているようだ。

 人には人の、猫には猫の社会があって、共に暮らしていくためには適切な距離感が必要になる。この島の穏やかな人と猫との関係が、これからも良好であることを願って島を後にした。

写真/仲程長治 文/シマネコキネマ