「あなたは現在住んでいる街を散策したことはありますか?」、「あなたは自分が生まれ育った街を散策したことはありますか?」、これらの質問をされた時、多くの方はYESと答えるだろう。
では「観光地化されているわけでもない、なんでもない街を散策したことはありますか?」と質問された時、YESと答えられる人はどのくらいいるだろうか。
この質問に対して、YESと答えさせてくれる“ホテル”が大阪府東大阪市にあった。宿泊すれば、街を散策させてくれるホテルとは一体……。今回、そんなホテルに筆者が実際に宿泊してきた。
■街全体がホテル
ホテルの名前は「SEKAI HOTEL」。実はこのホテル、布施の街全体を1つのホテルのようにしているのである。チェックインを行うフロントがある建物は、商店街にある以前は洋品店だったと思われる建物。そして筆者が今回宿泊したドミトリールームはこの建物の2階。洋品店の看板が出ている建物の中で寝泊まりをするのは少し不思議な感覚を覚える。ちなみに部屋によってはフロントとは異なる建物の場合もあり、その場合も洋菓子店の看板が残っている建物だったりする。
部屋に荷物を置いたあとは、さっそく「館内」の散策である。チェックインの時に館内の地図とSEKAI PASS(宿の宿泊者である証明書)がもらえるので、それらを片手にいざ宿の舞台となっている商店街へ。普通の地図とは違うオリジナリティあるイラストの地図には好奇心がそそられる。
また、受け取ったSEKAI PASSを見せれば割引など様々な特典が受けられる仕掛けになっているので、対象となっているお店を目指して歩いてみるのもいい。今回筆者は食べ歩きプランで予約していたので引換券のようなカードもチェックインの際に受け取っており、それもまた商店街の蒲鉾屋やたこ焼き屋などを訪れるきっかけにもなった。
そして実際に足を運んだお店の中には、おまけをしてくれたお店や井戸端会議のような感じでお話させていただいたお店もあり、ちょっとばかりではあるがその地域で暮らしているかのようにも感じさせてもらえる。
予約時にお風呂付きプランにしていたので、館内図を見ながら夜はお風呂へ。部屋と浴室は直結しておらず、地元の方々と一緒に汗を流す。地元でもなんでもない街のお風呂へ行くことなんてなかなか無いだろう。そして、お風呂上がりに部屋に戻るまで街の中を歩くことも街全体をホテルとしてイメージしており、まるでこの街に暮らしているかのように宿泊しているからできる体験である。
翌朝は朝食を付けていたので、地図を片手に朝食会場へ。朝食も街の方々と一緒。大都市や大手チェーン店では分煙や全席禁煙が当たり前となっている中、タバコを吸いながら新聞を読んだり、おしゃべりを楽しむ地元のおじちゃんやおばちゃんに囲まれながら過ごすのんびりとした朝の時間も下町ならではといった印象で、ちょっとした非日常感がある(タバコの煙が無理な人は、予約時に確認したほうがいいだろう)。