オールシーズンタイヤってどんなイメージでしょうか。特に冬ではスタッドレスタイヤに交換してなくてもよさそうだけど、雪道では、やっぱりちょっと不安……。

 スキーやスノーボードに限らず、冬のアウトドアで、しかも降雪地域に出かけるのであれば、やはりスタッドレスタイヤが欠かせない。

 10月に開催された「ジャパンモビリティショー2023」においてダンロップが、水に濡れると軟らかく、温度が下がると軟らかくなるという革新的な技術「アクティブトレッド」が搭載されたコンセプトタイヤを発表。

 その実力はいかなるものか!?  アウトドアユーザーにとっては見過ごせない話題となっている。

■車を取り巻く環境の変化の求められる中、求められるタイヤの性能を実現化

見た目では分からないが、画期的なゴム素材が開発されたアクティブトレッド

  大きくて、たくさんのギアを載せられるか、未舗装路や雪道での走破性はどうなのか、ロングドライブでの快適性や環境性能も大事。アウトドアシーンでの車選びはなかなか難しい。

 その車を取り巻く環境は現在、大きな変革期を迎えている。このような状況下において、タイヤに求められる性能も変化。ダンロップではこういった環境の中、ユーザーに新たな価値観を提供するということで開発が進められ、今回、形となって発表されたのが「アクティブトレッド」。

■ひとつのタイヤでの安全の限界、この常識を覆すことに挑戦

技術説明会では実際に濡れて軟らかくなるゴムを体感(写真提供:住友ゴム工業)

 さまざまな天候や路面状況において、ひとつのタイヤですべてをまかなうということは現実的に不可能であるという課題。この課題に対して、あらゆる状況に対応する多様なタイヤの開発が行われてきたのが、これまでの一般的なタイヤの開発背景。

 ダンロップはそれぞれの開発において、温度の違い、水の有無という点にフォーカスし、路面環境の違いを性能の向上に役立てることはできないかと着目。1つのタイヤに複数の性能を持たせる新しい発想で「アクティブトレッド」の開発が行われた。

■水に濡れると軟らかく、温度が低くなると軟らかく 状況に応じてゴムが変化「アクティブトレッド」

雨天時での濡れた路面でも優れたグリップ性能を発揮(*写真はイメージです)

 今回、発表された「アクティブトレッド」。大きく分けて2つのテクノロジーから構成されている。

●水に濡れると軟らかく「TYPE WET」

接地面のゴムが軟らかく変化することで路面との接地面積を増やし、優れたグリップを実現

 雨、濡れた路面という状況においては、タイヤと路面の間に水がたまり、接地面積が少なくなる。これが摩擦、グリップを低減させることによって滑る要因とされている。アクティブトレッドでは、水がゴム内部に浸透することによって、ゴムが軟らかくなる特殊な技術を開発。

 ゴムが軟らかくなることによって、タイヤ全体がゆがみ、操縦性に支障が出るのでは?  と思われるが、この技術では路面と接するタイヤの表面部分のみ軟らかくなり、剛性を損なうことなく、雨天時での操縦性、低燃費性が従来の夏タイヤよりも向上。

 軟らかくなったゴム表面は路面との接地面積を増やし、ドライの状況と変わらないほどの摩擦力(グリップ)を実現。テストでは、濡れた路面でもドライの状況とほぼ変わらないブレーキ性能を発揮したという。

●温度が下がると軟らかく「TYPE ICE」

ゴムが軟らかく変化し、凍った路面でもしっかりと密着することで滑りを抑制

 雪や凍った路面においては、温度に反応する新素材を開発。一般的に低温下ではゴムは硬くなるという、これまでの原理原則に真っ向から立ち向かったのがTYPE ICEのテクノロジー。

 新素材に含まれる樹脂を軟らかくさせる素材、混ざり方を低温下によってコントロールすることで、ゴムが軟らかく変化し、凍った路面や雪が積もった路面においても、優れたグリップ性能を発揮させるタイヤ開発を目指すという。

 「TYPE WET」「TYPE ICE」いずれの性能も、路面が乾く、または温度が上がることで、タイヤは再び硬くなり、繰り返し、その性能が発揮される。これならば、ドライブ中での天候の変化にもタイヤが自然と、路面環境に合わせて変化し、ストレスや不安を感じることなく安全なドライブを可能にしてくれることだろう。

■もうコレひとつで十分!?  スタッドレスタイヤは要らなくなるのか!?

ジャパンモビリティショー2023でアクティブトレッドを発表した住友ゴム工業 山本悟社長

 「ジャパンモビリティショー2023」ならびに、その後、関係者を集めて行われた技術説明会での発表によると、2024年秋に発売されるモデルについては、「TYPE WET」「TYPE ICE」の技術コンセプトを織り込んだ「レベル1」段階となる画期的なオールシーズンタイヤとして登場予定。

 やはり、オールシーズンタイヤで気になるのは雪や凍った路面での性能。来年の秋に発売を予定しているタイヤについては、これまでのオールシーズンタイヤのイメージを一変させるほどの性能となっているという。

 それでもやはり、降雪地域にお住まいの方や、スキー、スノーボードを趣味として、豪雪地帯などに頻繁に出かける方にとってはスタッドレスタイヤがまだまだ必要となるだろう。

 しかしダンロップでは、この「アクティブトレッド」の性能をさらに向上させ、あらゆる天候や路面状況にもひとつのタイヤで対応できることで、将来的にはタイヤ全体の生産数を減らすという性能面、そして環境面においてもアクティブトレッドが可能にする安全な運転、そしてサスティナブルな社会の実現を目標に掲げている。

 いよいよ本格的に冬が始まった。今すぐにでもアクティブトレッドを試してみたいという声も聞こえてきているが、来年、どれほどの驚きの性能で発売されるのか、まずはこの冬を思いきり楽しんで、その日を楽しみにしようではないか。

 

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