地蔵岳山頂から見る赤城山と大沼

 登山の目的は人それぞれだろう。とにかく多くの山頂を踏みたいピークハンターや、百名山踏破、日常では見ることのできない絶景を求める人や、都会を離れ静かに山歩きを楽しみたい人など、実にさまざまだ。

 今回は短時間で登ることができ、静かな山歩きを楽しめる穴場的な山を紹介する。山頂からの眺めもいいので、マイペースに登って景色を楽しみたい人にぴったりな山だ。

■山頂まで1時間で到着、花の百名山「地蔵岳」

 群馬県前橋市にある「地蔵岳(じぞうだけ)」は、日本百名山「赤城山」の最高峰「黒檜山(くろびやま)」の近く、麓の大沼を囲んで聳える1,674mの山だ。周辺にはツツジの群落が多く、夏はウスユキソウやツリガネニンジン、ハクサンフウロが所々で見られて「花の百名山」に選定されている。

 山頂には多くの無線塔が建っており、山頂付近の凹地は火口だったと考えられている。赤城山一帯はかつて大型の成層火山(せいそうかざん)と呼ばれるもので、噴火の際にできたカルデラ内の溶岩ドームが現在の地蔵岳だ。最後に噴火したのが2万数千年前とされており、カルデラ内に水が溜まって現在の大沼や小沼ができたと言われている。

赤城山側から見た地蔵岳。辺り一帯が噴火によって形成されたと考えるとスケールの大きさを感じる

 地蔵岳山頂までは「大洞(だいどう)駐車場」から登るルートを紹介する。大洞駐車場からは2本のルートがあり、まっすぐ山頂を目指す直登ルートと、八丁峠を経由するルートがあるが、おすすめは後者で八丁峠を経由するルートは階段こそ多いが歩きやすく、傾斜も比較的ゆるやかでテンポよく登れるだろう。

八丁峠経由の登山道。歩きやすい木道の階段が続く

 山頂までは広葉樹の樹林帯が続く。晴れていれば明るく日差しの温もりを感じながら歩けるだろう。

山頂付近。登山道はしっかり整備されていてストレスなく歩ける

 駐車場からゆっくり歩いても1時間ほどで地蔵岳の山頂に到着する。山頂にはスペースもあるので休憩しながら赤城山と大沼の景色を楽しめる。大沼の隣にある小沼の奥には麓の平野が広がっている。

小沼の奥には麓の平野が広がる

■地蔵岳をおすすめする「3つの理由」

 地蔵岳をおすすめする理由の1つは穴場で人が少ないことだ。筆者は赤城山とセットで登った際、赤城山では多くのハイカーとすれ違ったが、地蔵岳ではわずかに1人だった。山頂では景色を独り占めできた。

 2つ目は短時間で登れること。先述の通り、駐車場からゆっくり歩いても1時間ほどで山頂まで到着するため、初心者や親子登山にもトライしやすい。3つ目は山頂の眺望だ。山頂からは赤城山を一望でき、麓に広がる平野を見渡せる。短時間でこれだけの眺望が見られる山はそう多くない。 

 下山時は登ってきたルートを引き返すのがおすすめだが、同じ道では飽きてしまうという人は直登ルートでの下山もある。八丁峠経由ルートより短時間で下山できるが、急峻なので注意してほしい。

 標高は高くはないが、1月には雪が降ることもある。これからの冬の季節には凍結や降雪に備えてチェーンスパイクを携帯するようにしたい。気温も下がるので防寒着も必需品だろう。

 人の多い人気の山は魅力はあるが、人の少ない山にも魅力を感じる。自分のペースで歩くことができ、静かな山歩きは登山の醍醐味とも言えるだろう。

 

【登山ルート/八丁峠経由】(所要時間)
大洞駐車場⇒(58分)⇒地蔵岳⇒(48分)⇒大洞駐車場

【アクセス】
関越自動車道・赤城ICから大洞駐車場まで25km、36分

●【MAP】大洞駐車場