■そこにある素材をどれだけ使えたかが、その場に溶け込めた証
「子どもの頃から古いアメリカ映画が大好きだったんだ。敵に追われたヒーローが森に逃れて、獲ったウサギやなんかを焚き火に吊るして焼いたりして。それをナイフで切り取ってそのまま食べるのを見て、すごく憧れたんだ。これがやりたい!ってずっと思ってたんだよね」
だが、日本ではなかなかウサギやバッファローを獲る訳にもいかない。
そこで考え出したのが『焚き火ベーコン』だった。ハーブと胡椒、砂糖少々を加えたブレンド塩を、豚肉に刷り込んで4日ほど寝かした後、焚き火の煙と熱で長時間燻すことで水分が抜け、殺菌され、発酵が進み旨味も増す。更に燻すことで干し肉のように固くなり、切り分けて包めば行動食にもなる。
「噛めば噛むほど味が出るし、塩分糖分タンパク質全部摂れて、出汁もとれる。かなり万能なんだよ」
ベーコンが焼けるのを待つあいだ、自宅の裏山で採ってきた山菜も料理し始めた。今晩の料理に使う分だけ、自生している植物をいただく。
「そこにある素材をどれだけ使えたかっていうのが、そこに溶け込めた証だと思う」
ティピの背骨やペグを削り出すための木や薪まで、できるだけその場にあるものを利用する。これこそ、長野さんが野外での過ごし方で大切にしていることである。
※本記事は『ブッシュクラフターズ』(山と溪谷社刊)に加筆・修正を加え、再編集したものです