■入手した情報を生かす方法

 例えばバスフィッシングでは「風が吹いたらスピナーベイトが釣れる」といった情報をよく耳にする。風が吹いた時にスピナーベイト(ルアーの一種)を投げれば、釣れる確率はある程度上がるといったことなのだろうが、これだけでは再現性が高いとは言えない。 

 その理由は、風の特性がスピナーベイトに合っているかが大切だからだ。限られた情報だけでは到底効果的に魚をキャッチすることは難しい。風が吹いた時に水中の微生物などの有機物が舞い上がり、それにつられて上層に上がってきたベイトフィッシュの存在。そして、それを捕食するブラックバスが活性を上げたところに、強烈な光と水の押込みを発生させるスピナーベイトを投げるとヒットするという仕組みだ。

 つまり魚の活性が上がらない風や、そもそも水中の有機物が滞留していたり舞い上がったりしないような風では「風が吹いたらスピナーベイト」は成立しないのである。このように釣果情報や、技術的な情報には、ほとんどのケースでその裏に理由が隠されており、それを理解することが釣果に直結する。

 つまり情報のネットワークから拾い上げたヒントを逃さず、釣り場で自分のものにすることが大切なのである。店員や常連との情報交換をヒントに釣り場に赴き、どんな理由で釣れたのかを観察してみることで、釣れる魚の数が格段に増えるのである。

静岡県内の渓で出会ったアマゴ。こうした出会いを増やすためには情報収集が大切(撮影:小塩勝海)

■上達が遅い人の共通点は、流行に執着しすぎること 

 釣具店に勤務していて気付くのは、釣りの上達が早い人と、遅い人がいるということ。そして、釣りの上達が遅い人にも、上達の早い人と同様に共通点があるのだ。

 上達の早い人は先に挙げたとおり、情報収集能力と釣り場での行動による。一方、上達の遅い人に共通するのは、トレンドの影響を受けすぎる人である。

 釣りのトレンドは新しい価値観や商品を生み出す魅力的なものだが、トレンドはあくまでも釣り人の興味を引く潮流であっても魚が釣れるようになる絶対的な存在ではないということ。確かに新製品のルアーや、新釣法に興味を持って挑戦するのは向上心があってとても素晴らしいことではあるが、そこに執着しすぎてはいけない。筆者はこれまでにほぼ同時期に釣りを始めた2人に、1年後の釣果に雲泥の差がついたのを度々目にしている。

 同時に釣りを始めたA氏とB氏がいたとして、A氏は次々と知らない商品を買い込み、その商品がどんな時に釣れるのかをフィールドに通って検証を続け、来店の度に釣りへの興味を広げていった。一方、B氏もフィールドには高い頻度で通っていたが、購入する商品が必ずトレンドに沿っていた。新製品が発売されるタイミングでしか店には立ち寄らなかったのである。2人は釣りに出かける日数と、釣り用品購入金額はほぼ同じだったが、A氏の方が圧倒的に魚を多く釣っていた。

ルアーにヒットしたカンパチ。入手した情報を釣り場でどう生かすかが大切(撮影:小塩勝海)
釣り上達の早さと遅さには理由がある(撮影:小塩勝海)

 では、なぜB氏の釣果が伸びないのかと言えば、トレンドの影響を受けすぎて、自分なりの釣りのスタイルや楽しみ方、釣りの技術を確立する前に、新しい釣りに期待して依存してしまったからだ。仲間と話題をシェアしやすいトレンドに乗った釣りはとても楽しいもの。しかし釣果を伸ばしたいのであれば、新しいものばかりを取り入れるのではなく、釣り場状況に対応した考えや判断を土台にした自分の釣りスタイルを確立し「釣れる」現象を見つめ続けることで、さまざまな発見があり、魅力的なフィッシングライフを送れるのだと思う。