■新橋は鉄道発祥の地ではない? 

 新橋にはもうひとつ意外な事実がある。1872(明治5)年の10月14日、新橋ー横浜間に日本初の鉄道が産声を上げた。しかし同年5月7日、全線が開業する前に横浜―品川間で仮営業しているのだ。つまり、鉄道発祥の地は正確には新橋ではないのだ。旧横浜駅(現在の桜木町駅)にある鉄道発祥の記念碑には「明治5年5月7日、横浜〜品川間、1日2往復運転」と刻まれている。

 「鉄道開業というと皆さん、新橋―横浜間だと思うでしょう。でも新橋を起点にしたのは皇居に近かったからで、明治天皇をお招きし、出発式を行ったのは新橋駅ですが、実際には、横浜から鉄道の工事は始まったのです」(前出・櫻井寛氏)

旧新橋停車場のプラットホーム跡

 最初はイギリスから機関車もレールもあらゆるものが船に載せられて横浜港に着いた。全線が開業する前の明治5年5月7日に横浜―品川間で仮営業している。つまり日本の鉄道は横浜から始まっていて、鉄道開業当時は横浜駅だった現在の桜木町駅のそばに、鉄道発祥の地の記念碑もあるのだ。

鉄道発祥の記念碑。「明治5年5月7日、横浜〜品川間、1日2往復運転」と刻まれている

 明治5年当時、新橋〜横浜間は何時間ぐらいかかったのかというと、なんとたったの53分で表定速度32.8キロ。現在の京浜東北線で41分だから、150年かかってたったの12分短縮しただけということになる。もちろん、当時の駅は、新橋、品川、鶴見、川崎、神奈川、横浜(桜木町)の6駅と少なく、今は14駅に増えているので単純には比べられない。

 当時の横浜駅が現在の桜木町駅ということは、横浜駅は移転したことになるが、実際に二度移転している。新橋〜横浜間は日本最初の鉄道だが、やがて東海道本線になる。新橋から横浜(桜木町)に着いた列車は、スイッチバックして保土ケ谷方面に向かう。機関車を付け替えないといけないなど、効率が悪く、今の横浜駅付近に移転した。なので、現在の京浜東北線(東海道本線と東北本線を直通する電車線)も、横浜〜桜木町〜大船間は根岸線だ。


鉄道創業の地、近くを走るE233系。桜木町~関内間