秋の尾瀬は、湿原が黄金色に染まる草紅葉が見物だ。のどかな湿原の中を歩いたり、燧ヶ岳(ひうちがたけ)から湿原を見下ろしたり、草紅葉を2度楽しむことができる。そんな秋の尾瀬の魅力について、筆者が9月下旬に訪れた様子を踏まえてレポートする。また、尾瀬のビュースポットも紹介するので、尾瀬散策の参考にしてほしい。

■尾瀬有数のビュースポット「熊沢田代」

熊沢田代と燧ヶ岳の山容(撮影:川村 亨)

 筆者が今回辿ったのは、御池(みいけ)口から燧ヶ岳に登頂し、見晴新道から沼山峠へ下山する、1泊2日のコースだ。

▼尾瀬・燧ヶ岳のマップ  https://www.tokyo-pt.co.jp/oze/pamphlet

 早朝、御池口の駐車場裏から登山道に入り、燧ヶ岳山頂を目指して歩き始める。道中では、広沢田代(ひろさわたしろ)と熊沢田代(くまざわたしろ)と呼ばれる2つの湿原を通る。とくに、熊沢田代では湿原の奥に燧ヶ岳の山容が望めるビュースポットだ。湿原はきれいな黄金色へと染まり、周囲の緑の木々とのコントラストが鮮やかだった。今年は残暑が続いたので草紅葉が進んでいるか心配だったが、そんな心配をよそに草紅葉は見頃を迎えていた。

■燧ヶ岳から広大な尾瀬ヶ原を一望する

柴安グラ(※やまかんむりに品)山頂から尾瀬ヶ原を見下ろす(撮影:川村 亨)

 御池口から歩き始めて約4時間、燧ヶ岳山頂へと登頂する。燧ヶ岳は、柴安グラ(しばやすぐら)、俎グラ(まないたぐら)、ミノブチ岳、赤ナグレ岳、御池岳(みいけだけ)の5峰から成る。

 燧ヶ岳の最高峰である柴安グラ(標高2,356m)からは尾瀬ヶ原が一望できる。尾瀬ヶ原は東西約6㎞、南北2㎞にもおよぶ、本州最大の高層湿原だ。上から見下ろすと、その広大さに思わず感嘆した。さらに、尾瀬ヶ原の奥には至仏山(しぶつさん)が見られ、自然美の景観がそこにはあった。

 山頂でゆっくり過ごしたい気持ちとは裏腹に、天候が目まぐるしく変わっていく。開けていた眼前はすぐ雲に巻かれ、次第に雨がポツリと降り始めたのだ。レインウェアを着こみ、急ぎ足で見晴新道(みはらししんどう)を下った。