南北に約20kmにおよび、神奈川県の面積の6分の1を占める丹沢山地。首都圏からのアクセスもよいため人気のエリアだ。なかでも「塔ノ岳(とうのだけ・標高1,491m)」は特に人気の山で、地図アプリYAMAP(ヤマップ)によれば「関東エリアで2024年に登られた山」で高尾山に次ぐ第2位が塔ノ岳である。山頂から望む富士山の絶景と、関東平野を一望できる景色は一度は訪れてほしい場所だ。

 塔ノ岳は人気であるが、簡単に登れる山ではない。どこの登山口から登っても7時間以上かかるロングコースで、登頂できるのは経験を積んだハイカーに限定される。今回は特に体力を要する大倉尾根ピストンコースを紹介したい。往復で約13km、標高差は1,300mを超えるハードコースだが、チャレンジし甲斐のあるコースだ。

■大倉からのピストンコースはアルプスに匹敵する標高差!  夏のアルプス山行に向けての「バカ尾根」チャレンジ

平日でも多くの登山者で賑わう大倉登山口。早朝は静か

 紹介するコースは、秦野ビジターセンターのある大倉登山口からのスタートとなる。大倉登山口の標高は約290m、塔ノ岳山頂までの累積標高差は1,314mで、数値の上では日本アルプスの標準的なコースにもひけをとらない。例えば北アルプスで人気の燕岳(つばくろだけ・標高2,763m)は、中房温泉(なかぶさおんせん)から登った際の標高差は約1,367mと、塔ノ岳とほぼ同等の標高差だ。

アルプスの女王と呼ばれる燕岳。ここを目指すなら塔ノ岳は登っておきたい

 塔ノ岳は山そのものの標高は1,500mに満たないが、山頂までの道のりは長く、簡単ではないからこそチャレンジのし甲斐があり、山頂へ到着した時の達成感も大きい。標高の高いアルプスの山々に登ろうと思うと、標高差1,000m以上は標準的なため、体力作りにも塔ノ岳はうってつけだ。

 大倉登山口をスタートする序盤は緩やかな登りだが、水場「大倉の清水」を過ぎたあたりから長い階段が始まる。

 塔ノ岳まで続く大倉尾根は階段が多く、長い。さらに急な箇所もあるため、登山家たちからは「バカ尾根」と呼ばれ愛されている。そのバカ尾根を体感できるのは見晴茶屋を通過したあたりからだ。急ではあるが、総じて危険な箇所はないためチャレンジはしやすいが体力と根気を要する。

長い階段は心肺にかかる負担も大きい。マイペースで山頂を目指そう

 登りは下半身の負担に加え、心肺にも負荷がかかるため、オーバーペースにならないように気をつけたい。塔ノ岳までは要所に山小屋があり、休憩できるスペースがある。休憩をとりながら山頂を目指そう。大倉の登山口から約3時間50分、花立山荘までやってくると単調だった樹林帯のエリアは終わり、麓の景色や富士山の眺望を楽しめる。ここから塔ノ岳山頂までは眺望があるため、景色をカンフル剤に山頂を目指したい。

花立山荘の近くからは塔ノ岳山頂に丹沢山なども見えてくる。ゴールまではあと少しだ

 花立山荘までくると、ゴールは目の前。最後の登りを終えると山頂のシンボル尊仏山荘(そんふつさんそう)が見えてくる。