■大谷川の下流域で実釣。イクラの弾ける瞬間がたまらない

今回訪れたのは栃木県日光市内を流れる大谷川(だいやがわ)。川沿いに夏草が繁茂して水辺に降りるのが大変だった(撮影:水卜 ヤマト)

 この日、筆者が入ったポイントは大谷川の下流域。鬼怒川との合流点から数キロメートル上流の地点である。水辺に降り立ち周囲を見渡すと、遠くにアユ釣り師の姿が何人か見えるが、カジカ釣りの人影はない。一抹の不安はあるが、とりあえず釣りを開始した。

 ところどころにある平瀬のポイントには、カジカが好みそうな大きさ30~40cmほどの石がゴロゴロあり、期待がもてる。箱メガネで水中を覗くと、カジカが潜んでいそうな石のすき間がいくつか見える。そのすき間にイクラを近づけると、すぐに奥から黒い影が現れてあっという間にイクラが見えなくなってしまった。すると直後に黒い影の周囲に白いモヤが広がった。なんと一投目から本命カジカのヒットである。

釣り方はとても簡単。カジカが潜んでいそうな石のすき間にイクラを近づけるだけ(撮影:水卜 ヤマト)
カジカがいれば直ぐにエサに飛びつくはずだ「おっ、食いついた!」(撮影:水卜 ヤマト)
カジカがイクラを嚙みつぶしたことでイクラのエキスが白いモヤとなって広がっている。この瞬間がとにかくたまらないのだ(撮影:水卜 ヤマト) 

 この白いモヤの正体はイクラの中身が外へ飛び出したもの。カジカがイクラを嚙みつぶしたサインである。カジカ釣り経験者にとっては、水中でイクラの弾ける瞬間がもうたまらないのだ。カジカの穴釣りの一番の醍醐味だと筆者は思っている。

釣れたカジカは箱メガネでキャッチ!(撮影:水卜 ヤマト)
箱メガネは簡易水槽にもなる(撮影:水卜 ヤマト)

 カジカが食いついた後は特にアワセなど必要なく、水から竿をそーっと引き抜けばいいだけ。釣れたカジカはとりあえず箱メガネの中に入れて、その可愛い姿をじっくり観察してみるといいだろう。

大谷川で釣れたカジカたち。体長10cm前後のものがほとんどだった(撮影:水卜 ヤマト)
小型アクリル水槽があるとカジカをじっくりと観察できる(撮影:水卜 ヤマト)
この日もっとも大きいカジカは14cmもあった。大谷川での最大級といっていいだろう(撮影:水卜 ヤマト)

■初秋の大谷川でカジカ釣りを楽しもう

ゆるキャラ感が漂うカジカの愛嬌顔(撮影:水卜 ヤマト)

 この日はお昼までの4時間釣りを楽しんだ。釣果は14匹(8~14cm)で、カジカ釣りとしてはあまり釣れなかった方だといえるだろう。カジカが棲む石のすき間の多くが砂で埋まっており、いい石のすき間がなかなか見つからなかったのが釣果をのばせなかった理由である。それでも久しぶりのカジカ釣りでこれだけ釣れれば十分に満足だ。釣れたカジカたちは全て元気に川に戻っていった。

 今までカジカを見たことがない人は、石の下にこんな奇妙な魚が暮らしているとは夢にも思わないだろう。ゆるキャラのようにも見える愛らしいその姿を目にしたら、きっと誰でもカジカの虜になってしまうに違いない。

 これから秋に向けて大谷川のカジカの活性はますます上がってくるはずである。カジカの生息範囲は日本全国(一部を除く)、初心者でも子どもでも簡単に楽しめるので、清流のカジカ釣りにぜひチャレンジしてもらいたい。

 

※令和5年度、栃木県大谷川でカジカ釣りが楽しめるのは、栃木県日光市並木大橋から鬼怒川合流点までの区間のみ。遊漁期間は5月1日~11月30日まで。遊漁料金は鮎以外の魚種が対象の普通釣券(日釣券)1500円。電子遊漁券 FISH PASS(フィッシュパス)利用可能。管轄は栃木県鬼怒川漁業協同組合。他河川でのカジカ釣りは、禁漁期・捕獲してよい体長・捕獲方法などのルールが定められているので、事前に確認が必要。カジカ釣りは夏の終わりから秋がベストシーズン。

■【MAP】大谷川(並木大橋付近)