8月下旬にカジカ釣りに出かけた。場所は、栃木県日光市を流れる「大谷川(だいやがわ)」。日本三大名瀑の一つ、華厳の滝(中禅寺湖)から流れ落ちた水からなる利根川水系鬼怒川支流の一級河川である。
9月に入っても一向に衰えを見せないひどい暑さにうんざりする毎日。涼みがてら川釣りを楽しもうとしたわけだが、あまり難易度の高い釣りはしたくない。簡単に釣れて、数釣りも楽しめる癒しの釣りはないものかと思案したところ、大谷川のカジカ釣りに思い至ったのである。
今回は「穴釣り(見釣り)」とよばれるカジカ釣りならではの釣法で挑んでみた。大きな口とまん丸な目、さらにモグラが手を広げたかのような容姿はまるでアニメ『ポケットモンスター』に出てきそうな愛嬌のあるキャラクターのよう。そんな愛くるしい姿のカジカを相手に釣りを楽しんだのでレポートする。
■カジカは、健全な清流のバロメーター
今回、筆者が狙うカジカは日本に生息する三種類のカジカのうちの一つで大卵型(だいらんがた)と呼ばれるタイプ。東北~関西までの山間部、四国、九州の一部に分布するとされており、主に川の中・上流域に生息している日本固有種である。
カジカはきれいな水の中でしか生きられないため、健全な清流のバロメーターとして扱われることがよくある。戦後の高度経済成長による水質悪化や河川改修、ほかにも乱獲などが原因で日本各地で生息数が大きく減少。環境省が定めるレッドリスト(2020年版)では「準絶滅危惧種(NT)」に指定されている。
これに危機感をおぼえた栃木県では、比較的早い時期からカジカの保護活動(禁漁や放流)に乗りだした。近年その成果があらわれはじめており、県が定めるレッドリスト(2023年版)では準絶滅危惧種よりもリスクの低い「要注目」の扱いとなっている魚である。
■釣り具が独特。仕掛けは超シンプル
カジカはおもに夜間に活動する魚である。昼間は石と石の間のすき間など暗い場所に身を隠しているため、一般的な釣り方で狙うのはとても難しい。そこでカジカを狙うために先人たちがあみ出したのが「穴釣り(見釣り)」である。
穴釣りでは、まずカジカが潜んでいそうな水中にある石のすき間を探すことから始める。その際に必要なのが「箱メガネ」。箱の底には透明なガラスやアクリル板が取り付けられており、釣り人はこれを使って水中を覗くことができる。
そして、運よくカジカが隠れていそうな石のすき間を見つけたら、次はそこにピンポイントでエサを届ける必要がある。ここで役に立つのが、穴釣り用の「カジカ竿(長さは1mほど)」と「仕掛け」である。竿の先端には極端に短い仕掛け(長さは5~10cmほど)が付けられている。このため、竿先を石のすき間に近づけるだけで、簡単にエサをポイントに届けられるというわけだ。
穴釣りは石のすき間を積極的に探るため、竿先は絶えず石と擦れることになる。このため竿には頑丈さが求められる。カジカ釣り初心者は、丈夫で感度のいいソリッドタイプ(竿の中身が中空ではなく詰まっているもの)のカジカ釣り専用竿を使うといいだろう。
●カジカの穴釣り(見釣り)用のタックルと道具
【タックル】 一式の値段は2500円前後
・ロッド:長さ1mほどのカジカ竿
・道糸:1号以上(ナイロンとフロロどちらでもよい)
・オモリ:ガン玉や中通しオモリ(重さは川の流速によって調整)
・ハリス止め:ハリ交換が簡単におこなえる
・ハリ:ハゼ針、生イクラ針5~6号(ハリスは0.6~0.8号)
・エサ:生イクラ、現地調達の川虫(クロカワムシ)など
※竿先からハリまでの長さは5~10cmほどが扱いやすい
【その他の道具】 一式の値段は3000円前後(ただしウェーダー(胴長靴)とライフジャケットは除く)
・箱メガネ:水中を覗くための道具
・ウェーダーや長靴:これがあると川の中でも濡れずにすむ
・ビク:魚を入れて生かしておくための道具。アユ用の友舟がおすすめ
・ハリ外し:先端が細いフォーセップが便利
※子どもはライフジャケット着用のこと