9月に入り禁漁が間近になってくると「サイズじゃない」とうそぶく普段の余裕はどこへやら、「いい魚を釣りたい」強迫観念のようなものが釣り人の心を支配します。多かれ少なかれ欲に駆られて釣りをしてしまうのは、筆者がまだ未熟だからでしょうか。

 筆者の住む長野県北部では、この夏の猛暑と降水量の少なさで、河川の渇水状況が続いています。けっして十分とは言えない降水量でしたが、わずかですが降ってくれた雨の後、夏の暑さが一段落しました。向かったのは白馬・小谷エリア。管轄する漁協は姫川上流漁協です。

■食欲の秋!? 意外と素直なイワナたち

白馬の山並みを撮る定番スポット。「白馬大橋」から眺める姫川支流、松川の流れ

 前回、梅雨の最中に訪れた渓は瑞々しい緑に覆われていましたが、夏も終わりを迎えて周囲の緑はすでに色褪せ出しています。

 まずはとある支流の、さらに小さな支流へ。ぽつりぽつりと魚が水面を割ってくれます。しかもそれほどスレている感じもなく、素直にフライを咥えてくれます。さすがは“秋の荒喰い”!  実のところは直前の2日間、少しずつ降った雨のおかげかもしれません。

村の西側から姫川に注ぐ支流。北アルプスを水源としているだけあって、渇水でも清冽な水が流れてきます

 諸々の状況を鑑みてニンフ(水生昆虫の幼虫を模したフライ)を結びました。目ぼしいポイントごとにほぼアタリがあり、そのうち何割かハリにかかってくれますが、なかなかサイズが伸びません。泡の浮いた反転流の中でしつこく泳がせたニンフ。それには食い付かずに、仕掛けのマーカー(目印)を狙ったイワナがふわりと浮かんでパクりと口を開けました。

 「大きい! 尺上じゃん」と思って眺めていると、マーカーをしっかりと咥えて水中に引き込みました。その勢いでわずか一瞬でしたが、ロッドがしなります。当然(目印なので)ハリは付いていません。悔しいけれど、どこか微笑ましいような愛おしいような。夏の終わりの切なさ、やや暗くなっていた心が少し楽になりました。

なんとも言えない、水にとろけるような色合いのイワナに見惚れてしまいます

 ウェーディングしていると寒いほどでしたが、森を抜け林道に上がると“ぬるり”とした風が体にまとわりつきました。里へ下る道すがら、おしゃれな身支度でカップル(?)が釣りを楽しんでいました。まだしばらく夏は続きそうです

■コンディションを読み違えたけれど…… ヤツはいた!

取水量を超えるほどは雨が降らなかったようです。すっかり水位の下がった流れ

 前日、待望のまとまった雨が降りました。再び白馬・小谷エリアへ。

 姫川本流は水位はそれほど上がっていませんが、すっかり茶色く濁ってカフェオレのような色。そこで源流部で取水されている、姫川の東側を流れる沢へ向かいました。藪をかき分け歩くこと約1時間。木に引っかかるように斜面を降りて、ようやく流れと対面しました。しかし、まるで雨など降らなかったかのような渇水状態です……。

 ただ、この沢の奥では尺上のイワナを過去何度も目撃しています(なかなか釣れませんが)。崩れた護岸に囲まれた“溜まり”をそっと覗くと、いました。鋭く引き締まった印象の大きなイワナが悠々と浮かんでいます。30cm半ばはあるでしょう。