7月の連休に「針ノ木雪渓(はりのきせっけい)」に登った。針ノ木雪渓は白馬岳の「白馬大雪渓」、剱岳の「剱沢雪渓」とならぶ日本三大雪渓の一つである。その針ノ木雪渓の下山中に遭遇した落石事故の状況や雪渓での落石の恐ろしさ、電波が通じない状況の対応について筆者が実際に経験したことをレポートする。
■雪渓の音なき落石
雪渓の一番の恐ろしさは、落石である。雪渓上で起こった落石は音がなく、突如として我が身にふりかかる。以前、雪山の巻道で落石に遭遇したことがある。筆者より少し前を歩くメンバーのすぐ左の斜面を音もなく岩が転がっているのを目撃し、「ラク(落)!」と何度叫んでも無音なので気がつかない。「左斜面!」と叫んでようやくメンバーたちは落石に気がつき、運良く難を逃れた。
その経験もあり、雪渓を歩くときは周りをよく観察しながら歩くようにしている。今回まさか落石で負傷した登山者に遭遇するとは思ってもみなかった。
■針ノ木岳の大絶景
針ノ木岳山頂までは扇沢登山口から約6時間かかり、雪渓を登るので十分な装備と体力が必要である。扇沢登山口から上りで約5時間のところに針ノ木小屋があり、そこで1泊して翌日針ノ木岳に登った。
山頂は360度の大絶景で眼下に黒部湖が見え、西側に立山や剱岳が、北東には鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)や爺ヶ岳(じいがたけ)、東には蓮華岳(れんげだけ)、南に烏帽子岳(えぼしだけ)が見える。また、針ノ木雪渓を上から見下ろせる。東にある針ノ木小屋までは往復で1時間40分ほどの行程で、登山道上にはチングルマやミヤマダイコンソウなどの高山植物の花畑が広がっている。
■高山植物の女王「コマクサ」の群生地「蓮華岳」
針ノ木小屋の先にそびえる蓮華岳はコマクサの群生地として知られ、針ノ木小屋から往復2時間の道のりなので、コマクサの咲く時期であれば、ぜひ足を延ばしてみるのをおすすめする。登山道脇のガレ場一面にピンクのコマクサが広がっており、登山歴9年の筆者ですら初めて出会うコマクサの大群生であった。また運がよければ、滅多に見られない白いコマクサに出会えるかもしれない。