■御神木は「肌まもりの木」
さて、私がそもそも御霊神社にやってきたのは、御神木のクスノキが「肌まもりの木」としてとても有名だと記事で読んだからである。戦時中の激しい空襲、焼け焦げた状態から再生し、今なお成長し続けているという素晴らしい生命力、さらには、お参りした人のやけどが回復した言い伝えもあることから、美肌の聖地になっているのだとか。
肌激ヨワの私、思わず拝む。なにとぞ、なにとぞ私の肌に潤いを!
炎天下のなか必死で祈り、少々クラクラしてきた。今年の猛暑をナメてはいけない。日陰とおみくじを求め社務所に向かう。すると「福は内 鬼は外 金のなる記」という色紙が飾られており、パンチの利いた文言が書かれているではないか。別の意味でクラクラしてきたぞ!
おみくじはとてもシンプル。結果は「小吉」と微妙だったが、萬葉歌がとても趣深いので、しっかり読み込むことにしよう。
「二人ゆけど ゆきすぎがたき あきやまを いかにか君し ひとりこゆらむ」
天武天皇の長皇女、大伯皇女の歌である。
過去は過去として、割り切る心を育てること……。ああ、まさに! 私は昔から失敗をいつまでもイジイジイジイジ気にする性格。これを直せば運気も吉に急転する、ということだろう。確かに!
ううむ、このおみくじ、全体的に説得力がある。特に「老後(あとさき)」という項目があまりにも深い。老後……! まさかおみくじで老後に関しての助言がいただけるとは思わなかった。
なになに。「多少の経済力を持つがよし」――。オイオイ、リアル過ぎてちょっと怖いわ!
ありがとう、御霊神社。「肌まもりの木」目当てで来たが、なんだか金銭的な面をいろいろ考えさせられた。さすがそろばん勘定に長けた船場商人を見守ってきた氏神様である。私はもう一度本殿に顔を向け、深々と礼をした。
さて、ここで今回の旅を終えようと思ったのだが、もうひとつ、神社から出て南側にある「南鳥居」をぜひご紹介したい。
御霊神社には江戸時代まで「宝城寺」という神宮寺が併設されていた。ところが明治時代の神仏分離令により、そのお寺の敷地が切り離され、神社の南側に鳥居だけが残ったそうだ。その残り方が、ユニークというかなんというか。