■ピークは伝説の「兄弟」に由来
日本百名山の中で4番目に標高の低い天城山だが、想像以上に見晴らしがよかった。万二郎岳の山頂は広々としていて、木々の間から東伊豆の海が見渡せ、筆者が訪れた時には周囲に馬酔木(あせび)の花が咲き乱れていた。
万二郎岳の山頂から万三郎岳方向へ少し下りた岩場へ行くと、これから行く万三郎岳や迫力ある富士山を拝むこともできる。都心から近く、登りやすい上に絶景まで楽しめるなんて、得した気分だ。
ピークの万二郎・万三郎岳の名の由来だが、一説には、天城には兄弟の天狗伝説があり、達磨山(万太郎山・番太郎山とも呼ばれる)には長男の「万太郎」、万二郎と万三郎岳にはそれぞれ同じ名前の天狗が住んでいたことから、名付けられたともいわれている。
登山中にすれ違ったハイカーも、地元では「兄弟の山」として親しまれていると教えてくれた。2つ仲良く並んだ山の姿に、なんだか愛着が湧いた。
■迫力ある富士山と海を堪能
万二郎岳からは、馬酔木(あせび)のトンネルがある馬の背を通って1時間ほどで万三郎岳へ到着。なだらかな尾根は歩いているだけで心地がよい。
万三郎岳のピーク付近には、固有種であるアマギシャクナゲが群生しており、満開となる5月下旬ごろは特に登山者が多い。紅葉の季節も燃えるように鮮やかに色づき、人気が高いそうだ。
万三郎岳の山頂は木々に囲まれているが、ここでも再び富士山を見ることができた。天城山の最高峰で軽い昼食を摂って下山へ。
八丁池へ続く分岐点を右に曲がると、丸太の階段が続く道が出てくる。ここから下山までは眺望はよくないものの、シャクナゲの群生地や美しいブナ林を通り、気持ちをリフレッシュしながら歩くことができた。
下山時は斜面を巻きながらゆっくりと下りていくため、時間的には長く感じるが危険な場所はないように思えた。
登山開始からコースタイム通り、4時間半で登山口へ戻ってきた。登山道のほとんどが林の中を歩くコースで、ブナの大木や樹木が日差しを遮ってくれる。しかし標高は高くないため、夏場は熱中症対策を忘れないようにしたい。
伊豆半島には温泉郷も多いので、お風呂で汗を流してから帰宅しても時間に余裕のある山行になるだろう。筆者は、伊東駅の駅前で新鮮な刺身定食を堪能し、心もお腹も満たされたまま帰路についた。
季節によっては、カワセミやシジュウカラなどの野鳥や、希少なアサギマダラの舞う姿も見ることができる。初心者でも歩きやすく、整備されているのは地元から愛されてきた証に違いない。
紅葉シーズンなど、別の時期にも訪れてみたいと思える山「天城山」。「天城越え」で有名な土地を、名曲を口ずさみながら歩いてみてはいかがだろうか。
●天城山
住所:〒413-0301 静岡県賀茂郡東伊豆町大川
●天城縦走登山口(バス)
住所:〒410-2513 静岡県伊豆市菅引
【参考サイト】
・登山コース(天城東急リゾート)
https://amagikogen.co.jp/amagisan/
・伊東駅からのバス
https://amagikogen.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/06/202203_bus.pdf