初夏、渓流では水の流れと新緑のハーモニーが美しい季節です。夏に近づくにつれ、水辺で過ごす時間が心地よいですね。

 水のそばには多くの生命が息づいています。魚や鳥、そして昆虫(それ以外の生物も)たち。その昆虫のなかには、一生の全て、もしくは幼虫期だけ水中で暮らす水生昆虫たちがいます。初夏〜夏の風物詩であるホタルが有名ですが、カゲロウなど水生昆虫たちは種類ごとに羽化のタイミングがあり、ほぼ一年中飛んでいます。

 短い記事の中では語り尽くせないのが歯痒いですが、知らない人が多い水生昆虫の世界の魅力、そして自然を見守る大切さについてお伝えしたいと思います。

■“儚さ”の代名詞! カゲロウ

夕方、小さな流れから飛び立つエルモンヒラタカゲロウのメス。その姿はまるで天使のよう

 “水生昆虫”を代表するのが「カゲロウ」ではないでしょうか。その姿を見た(認識した)ことがなくても、その言葉は聞いたことがある人が多いのでは? 光の屈折現象としての「陽炎」も有名で、儚いものを例えるときに使われることがありますね。実際、どちらも儚い存在です。

 国内にも数多くの種類が生息していますが、恐竜時代からの生き残り、「生きた化石」とも言われています。幼虫は長い時間を水中で暮らした後、水面付近で脱皮して亜成虫・成虫へと変態します。口が退化しているために食事を摂ることもなく、川の周辺を舞いパートナーと巡り会います。早いものだと、わずか数時間で命が尽きます。まさに“諸行無常”。儚い生を実感させられらます。

水面で脱皮して亜成虫になったばかりのモンカゲロウ。早く飛び立たないと、この先の瀬で溺れてしまいそうで、つい心配になってしまいます

 水面付近で羽化した(亜)成虫が突如水面に現れ、儚げに舞う姿は、まるで妖精のようです。完全変態するため、まずは亜成虫という状態がありますが、種類ごと、さらには雄雌でも見た目が微妙に違います。よほど慣れていないと見分けるのは難しいでしょう。

 極小の虫たちも興味を持って観察していると、その違いが見えてきておもしろいですよ。

■「じゃない方」のカゲロウも!

ヒメカゲロウの一種でしょうか? 忙しなく飛び回るので、同定が難しい

 ちなみに、名前からよく混同されるのがウスバカゲロウ。こちらはまったく別の種類です。一生を陸上(地中も含める)で過ごす“陸生昆虫”で、幼虫は「アリジゴク」の名で知られていますね。

 他にもヒメカゲロウやクサカゲロウなどの仲間も種類が多く、名前にカゲロウが付く“陸生昆虫”を河原などの水辺で見ることができます。見た目はカゲロウというより、「カワゲラ」に近い印象があります。