5〜9月頃、夜の海の波打ち際が青く光る日がある。幻想的な光景は、夜光虫(やこうちゅう)という海洋性プランクトンによるもので、波や船が通ったときの刺激に反応して青く発光する。大きさは1mmほどで、風船が膨らんだような形をしている。

 いくつかの条件がそろったときに夜光虫は発生し、時に「青く強い光=夜光虫の大発生」に出会えることも。

 今回は筆者が遭遇した夜光虫大発生の時の様子と、出会える条件について説明する。

■2021年6月の夜光虫大発生

 2021年6月。夜光虫の発生条件がすべてそろった、絶好のタイミングの日。辺りが暗くなるのを待ち、条件がよさそうな静岡県静岡市の「三保真崎海水浴場」へと向かった。

 海岸に着くと、遠目からでもはっきりとわかるほど、海岸が見たことのない輝きを放っていた。夜光虫の大発生だ。ここまでの規模を目撃したのは生まれて初めてだった。

 波が押し寄せるリズムに合わせて、波打ち際が青く光っている。海岸の波がきて濡れている箇所や潮だまりで足踏みをすると、水しぶきが青く、パッと光る。すっかり心を奪われ、時間を忘れて滞在してしまった。

夜光虫の大発生で、青く光る波打ち際(撮影:新井夏海

■夜光虫の発生条件とは

 夜光虫の発生にはいくつかの条件がある。筆者が大発生を観測した日の様子と比較して紹介していこう。

静岡県静岡市「三保真崎海水浴場」での夜光虫の大発生(撮影:新井夏海)

● ①海水温が上がりプランクトンが発生しやすくなる5〜9月頃

 海洋性のプランクトンである夜光虫は、海水温が上がる時期に多く発生する。地域によって差はあるが、5〜9月頃がチャンス。筆者が遭遇したのも2021年6月17日。シーズン真っ只中の出来事であった。

● ②晴天が続いた日、雨が降った翌日、海水温が一気に上昇する5月頃は特に狙い目

 5月は気温の上昇に伴い、海水面の温度もグッと上がる時期。また、雨が比較的降りやすい時期。雨が降ると川から海へと流れ込む栄養豊富な水の量が増え、プランクトンが急激に増殖する。

 この時期は夜光虫が特に増えやすく、大発生が狙える。筆者が観測した日も前日に大雨が降り、当日は気温が急激に上がった蒸し暑い日だった。過去の経験からいっても、このような日は夜光虫の大発生を目撃しやすいはずだ。