■「雪かき」のために体と雪を知る

 何も考えず、一心不乱に「雪かき」をしてしまえば、間違いなく体の故障につながります。いかに頭を使って「雪かき」をするか。始める前の準備とともに重要なのは「体の構造と雪を知ること」です。ここでは「体の仕組み」と「雪」について紹介します。

●【重いもの=腹に力を入れる】

 スポーツ経験がある方や、運動指導に関わっている方にとっては常識ですが、意外と知られていないのが「腹筋」の重要性です。普段から体を動かしている方は、自然と体の使い方のイメージが湧き、雪かきの際、無意識に腹筋に力が入ります。

 一方、運動不足の方はそこが意識できないのです。ぜひ、雪かきの際はお腹に力を入れてください。これだけで腰へのダメージは軽減されます。腹筋は体内に用意されている「天然のコルセット」というイメージを持ちましょう。

両手でウエストを押しつぶし(左)、それを腹筋で押し返す(右)。この状態がお腹に力が入った、腰を守る「腹圧」が高まった状態(撮影:森脇俊文)

●たくさんの雪を持たない

 腹筋同様に重要なのが「スコップ上の雪を重くしない」こと。人それぞれ扱える重さには個人差がありますが、必ず「物足りない重さ」で雪かきを行なってください。

 こう説明すると、「そんなんじゃ、いつまでも終わらない」という怒りのような声をいただきます。ここでもポイントになるのが、「天気予報」と「雪かき時間の確保」です。

 天気予報で降雪のタイミングを予想し、物足りない重さで雪かきを行なっても終えられる、時間を確保するのです。これで楽に雪かきは行なえますし、負担の少ない作業は自らの腰を守ることにつながります。

●雪は「質」によって「重さ」が違う

 寒い日に降った雪は、スコップにたくさん乗せても重くないことがあります。一方、湿った雪や、自宅前に残された道路を除雪した雪の山は、少しの量で重く感じます。

 もちろん腰を痛めやすいのは後者ですので、雪の状態によってスコップに乗せる雪の量を調整することが重要なのです。めんどくさいからといって、力任せの作業をしてしまうと、必ず体が悲鳴をあげます。

 ここでトレーナーとしてのアドバイス。オーバートレーニングは体を痛めるだけでメリットはありませんが、体への適度な負荷(オーバーロードの原理)は、筋力アップ、代謝アップにつながり、太りにくい体作りのベースとなります。

 さらに、時間をかけての雪かきは有酸素運動の効果も期待できます。心肺機能向上や脂肪燃焼効果も考えられる「時間をかけての雪かき」と、数日腰痛で寝込むリスクを背負いながらの「短時間雪かき」。雪かきで健康になれることを考えれば、誰もが前者を選択すべきなのです。