■“谷川劇場”の始まり
この日の天気予報は、午前中は曇り、12時前後に晴れる予報でした。
登山を開始した頃は雨混じりの雪が降っており、歩みを進めるのも森林限界から先は特に緊張しました。晴れ予報を信じているらしく、他のパーティーも数組いました。風がそれほど強くなかったので、ガスに包まれた景色の中でも新雪を楽しんでいる方々ばかりでした。
山頂に着いた時は、太陽の光も届かないほど薄暗く灰色の世界で、景色を諦めかけました。しかし、肩の小屋で休憩していると、どんどん外が明るくなってきたので、もう一度山頂へ向かいました。
■ドラマチックな“谷川劇場”に大感動!
再びトマの耳に登頂するもガスに包まれたまま真っ白でした。けれど先ほどまでの灰色の世界とは全く雰囲気が違います。風も止み、とてつも無い静けさ……。時折、太陽の光が届くようになりました。
オキノ耳に登頂すると同時に、目の前のガスがサーっと消え始め、青い空が広がってきました。歓喜の声が止まりません! 静かな山頂で自分たちの声だけが響きます。でもまた一瞬でガスに包まれる……。それをしばらく繰り返していましたが、そのあと稜線より上の雲が一気に消えて、白くなった谷川連峰の姿を見ることができました。噂に聞く“谷川劇場”のシナリオに深く心を動かされたのでした。