この夏、缶詰の温め方についての議論がネット上を賑わせた。直火で缶詰を温める様子を、一部の情報サイトやキャンパーが公開しており、缶詰業界から「直火は危険。湯せんにすべし」とお達しがあったのだ。

 僕もかつては、フタを開けた缶詰を焚き火で温めたりしていたけど、今はやっていない。その理由は、缶の内側をコーティングしている塗料やフィルムが溶け出す恐れがあるからだ。

 直火でもコーティングを損なわないテクニックもあるけど(当連載のvol.8を参照)、専用の道具が必要になるし、底面を熱するから温まり方にはムラが出る。

 それに対して湯せんの場合は、最高温度が100℃なので、缶内面のコーティングが溶け出す恐れはない。缶全体が加熱されるため、中身もムラなく温まる。例えて申せば、レトルトパックのカレーを湯せんするのと同じなのだ。

 ただ、レトルトパックの場合は「3〜5分沸騰させてください」といった指示が書かれているけど、缶詰には書かれていない。そこで今回は、僕が普段やっている「絶対に失敗しない湯せん方法」を紹介したい。

■湯せんをすると見た目も香りも変わる

気温5℃で開けた様子。右:湯せん後に開けた様子

 まずは、缶詰を湯せんすると中身がどれだけ変化するかを見てほしい。実験に使ったのはホテイフーズの「とりチーズ」というおつまみ缶詰。既存のやきとり缶をベースにし、チーズソースと角切りチーズを加えた、ちょいとリッチな商品であります。

 比較画像の左は、気温5℃の時に開けた様子だ。低温下でチーズソースが固まり、何だかとても残念な料理に見える(もちろんそのまま食べられるが)。一方、写真右は湯せん後に開けた様子。チーズソースが温まって溶けており、表面には脂分が浮かんでいる。鶏肉と角切りチーズもツヤが出て美味しそうだ。

 写真では伝わらないが、匂いだって素晴らしい。炭火焼きされた鶏肉の香ばしさと、溶けたチーズの濃厚な匂いが立ち昇ってくるのだ。