■「目からウロコ」先輩のアドバイスに救われる!

 時間の経過と共に心の余裕もなくなってきている。普段「自分で答えを探るのが釣りの醍醐味」などとうそぶいているが、ここは謙虚に伺いを立ててみた。

このサイズになるとファイトがかなりスリリング!

 僕はここまで小さいフライに固執していたのだが、先輩が太い指に摘んで見せてくれたのは、かなり存在感のあるスタンダードウェットフライだった。フックは#8(大きい)で、まさに“目からウロコ”! 当然、今回使う予定のフライローテーションの中には入れていなかったが、予備のフライボックスの中に、一本だけ同じパターンが収まっていた。ただ、巻き手の好みや微妙なマテリアル(材料)の違いがあるのがフライの面白いところ。ベテランの先輩と僕のフライでは、同じパターンと思えないくらい見た目がかけ離れていた。サイズも僕のフライは#10。明らかに一致するのはレッドタグ(フライのお尻部分が赤い)くらいか。それでも“藁にもすがる思い”で、そのフライを結んだ。

 “イワシの頭も信心から”の心境で何度かキャスティングを繰り返し、フライを流していると、痛烈なアタリと共にいいサイズのハコスチがロッドを絞った。釣れると言っても1時間に1匹程度のペースだが、それから終了まで3本。納得のいく魚を手にすることができた。

 やはり持つべきものは頼りになる先輩なのかもしれない。経験と懐の深さに首(こうべ)を垂れる秋の渓であった。