桃栗三年柿八年。今回は秋の旬の味覚である栗の話題だ。

 筆者が住んでいる地域では畑や庭に栗を植えている家庭が多い。車で走っていても結構な確率でイガグリが道端に転がっているのを目にする。それが以前から気になっていたのだが、今回、偶然にも知人からイガグリをいただいた。これが中々立派なイガイガである。これとどう対峙しようか思っていたのだが、以前、農家の友人から「焚き火用に」と譲ってもらっていた栗の木がある!  栗の木と言えば、焚き火マニアの中で人気のあるレアな薪だ。

 自称焚き火ストの血が騒ぐ。このレア薪で焚き火をすることにした。さらにイガグリを焼いて旬の味覚をいただく。改めて栗の木がなぜレア薪なのか?  さらに焚き火でイガグリのまま焼いた栗の味の行方は?

■なぜ、栗の木はレア薪と言われるのか?

イガグリと薪割りした栗の木(撮影:中村真吾)

 ブナ科の落葉樹で北海道南部から九州まで日本の広い範囲の野山に自生している栗の木。ナラやカシなどの最寄りのホームセンターで販売されている薪とは異なり、一般的に流通していない故に見かけることも少ないレア物。反面、人気が高い焚き火マニアおすすめの薪だ。

●栗の薪の特徴

「炎が優しい…」ファイヤーディスクで栗の木をティピー型に組んで焚き火を満喫(撮影:中村真吾)

 栗の薪の最大の魅力は、燃やした時に奏でられる優しい音色。「ボボボ…  ボツボツ…  ボボボ… 」

 派手ではないが、耳に残る不思議な音。なぜこの様な音が鳴るのかというと、栗の木は他の木より水を吸い上げる道管が太く、この道管部分に残った空気が燃焼する時に圧縮されるためで、この空気が道管から抜けるまではこの音色を奏で続ける。

 その後は優しい炎で長時間燃焼し続ける。音色も含めた一連の流れが焚き火を見事に演出してくれ、心身ともに癒してくれる。

 注意すべき点はしっかり乾燥されているかどうか。乾燥が不十分で道管に水分が残っている場合、薪が破裂する。これを「爆(は)ぜる」という。これは本当に危険だ!

 「栗が爆ぜる」という言葉を聞いたことがないだろうか?  栗は硬い皮の内側に多くの水分を含んでいる。そこに熱が加わると水分は膨張し、水蒸気になることで栗内部の圧力が高まり破裂する。

 薪も乾燥が不十分だと同様のことが起きるので、もらった栗の木の場合、すぐ焚き火をしないようにくれぐれも注意したい。

 焚き火台に合うよう適当なサイズにした栗の薪をティピー型に組み、まずは、焚き火を堪能。「ボッボボボボ…  ボツボツ… 」栗の薪特有の音色を奏で始める。焚き火台の上でティピー型も安定した状態で炎が広がっていく。まもなくして栗の薪が奏でる音色も聞こえなくなった。薪はその後も優しい炎を上げながら燃え続けた。