■3. 陽が落ちた雪の森は昼間とは別世界が広がる

麓の街、スキー場で働く圧雪車や降雪機、ナイター照明など街とは異なる夜景が楽しめる

 雪の上を歩くスノーシューは、雪を体験できる最もポピュラーなスノーアクティビティのひとつ。真っ白な雪原や森を歩くと、澄み切った空気や自然の美しさに触れられ、五感全てで雪を感じられるのが魅力だ。とくにスノーシューは年齢や体力、経験を問わないため、誰でも体感できるのが大きなメリット。平坦な道のりを歩くコースや起伏ある山の斜面を上り下りするコースまで様々なコース取りが可能だ。

 白馬村の各スキー場やアウトドアガイドではいくつものツアーを用意しているが、ここでは趣向を変えた夜のスノーシューハイキングに参加してみた。月明かりに照らされた雪面を歩き、白馬村を一望できる丘まで行く、行動時間は約1時間半のツアーだ。

 場所は白馬村の北にある小谷村の境にある落倉高原。なだらかな地形と森があるため、初級者ツアーに適した場所だ。冷え込む夜にあわせて暖かい格好をして集合場所へ行くと、スノーシューとストック、ヘッドライトが準備されていた。全く初めてでもガイドツアーだから、スノーシューの履き方や歩き方をレクチャーしてもらえる。

 さっそくガイドの後ろをついて雪の上に立つと、サクサクという雪を踏みしめる足音が辺りに響き渡る。自分たちが歩く音しか聞こえない。ヘッドライトで照らした先は銀世界、その周りは薄暗い中に雪をまとった木々が立っている。非日常的な雰囲気に気分は高揚しっぱなしだ。

 30分ほど平坦な森の中を歩くと目的地に到着。薄曇の夜空からは薄っすらと月明が漏れている。眼下には所々に明かりが灯る白馬村の街、少し目線を上げると奥には八方尾根スキー場で動く降雪機や圧雪車両の照明が見える。月明かりに照らされれば、右手には北アルプスの峰々を見ることもできるらしい。体を冷やさないよう温かいドリンクを飲みながら、スノーシューでしか来ることができない展望スポットの景色を存分に堪能した。

写真には写らなかったが、いくつもの星が頭上で瞬いていた

 帰り道、光量の少ない森の中で、頭上を見上げると、行く時には陰って見えなかった星空が少しだけ広がっていた。ナイトスノーシューツアー、病みつきになりそうな面白さだ。

●施設情報
NPO法人落倉バックカントリーフィールド
〒399-9301 北安曇郡白馬村北城14920-61(白馬グレイスランド内)
https://ochikurabcf.jimdofree.com/

■4. 今どきのスキー場は、滑らない人も等しく楽しめる

 白馬村には5つのスキー場があるが、今回は滑らなくても楽しめる施設が整っている白馬岩岳スノーフィールドへ足を運んだ。

 ここは、村内にあるスキー場では珍しい標高1,289mの独立峰にあるスキー場。ほかのスキー場は北アルプスの主峰から延びた山域にスキー場が位置するが、岩岳はそれらから独立しているため、独特な景観が楽しめる。高い山々に囲まれた岩岳はまるでぽっかりと浮かんだ小島のようで、山頂から見渡す山々の大パノラマは絶景。白馬村にあるスキー場では唯一西側にそびえる山々を真正面から仰ぎ見れるとあって、リピーターも多い。

 そんな山頂へはゴンドラ1本で行ける。滑らない人にとってはゲレンデを歩くのも大変だが、ここではスノーシューズのレンタルも用意されているから安心。15分ほどの空中散歩を楽しむと、山頂へ到着。スキー場とあって周りはスキーやスノーボードを持った人ばかりだが、その中にちらほらと滑らない人もいるから少し安堵感がある。

別世界へ誘うようなハクバマウンテンハーバーのゲート。焼き立てのパンや珈琲を提供する「THE CITY BAKERY 」を併設

 左手側に広がる白馬村を片目にやりながら、さっそく北アルプスの絶景が一望できる山頂テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(ハクバマウンテンハーバー)」へ。通年で営業しているこの施設は1年を通して白馬の四季が楽しめる。とくに冬場は、凍てつく空気のおかげで視界がくっきりとし、晴れた日には青空と雪に覆われた山並みのコントラストには言葉を失うほど。少し突き出たテラスに躍り出ると、浮かんでいるような気分に浸れる。海外を思わせる猛々しい冬の北アルプスの景色を余すところなく噛み締めたい。テラスの手前には温かいイートインスペースもあるため、寒くなってもすぐに中に入れるのも嬉しい。建物のすぐ脇には夏場に大人気のブランコ「ヤッホー!スウィング」が冬の装いで佇んでいるから、真っ白な山に向かって漕ぎ出し、浮遊感を楽しもう。

テラスからは全方位に渡って雄大な山々が眺められる
青空と雪山に向かって漕ぎ出すブランコはここでしかできない体験

 もうひとつ、2021年秋に誕生した「⽩⾺ヒトトキノモリ」にも立ち寄ろう。ここは山頂部からリフトで少し下がった場所にあり、白馬村の田園風景と北アルプスを一望できるエリア。信州初出店となる「CHAVATY HAKUBA(チャバティ白馬)」でティーラテとスコーンを頬張りながら、ピクニックタイムが楽しめる。

三角形の天井が特徴的な「CHAVATY HAKUBA(チャバティ白馬)」

 とくにクロモジを使ったスコーンは爽やかで香りが高く人気メニュー。白馬店のオリジナルメニューと聞けば注目しないわけにはいかない。山頂とはまた違った視点から眺められる景観を十二分に満喫しよう。

●施設情報
HAKUBA IWATAKE SNOW FIELD
白馬岩岳スノーフィールド
〒399-9301 北安曇郡白馬村北城12056
https://iwatake-mountain-resort.com/winter