■シビアだがおもしろい! 大物相手の真剣勝負

 何度か訪れたことのある八千穂レイクだが、いつにも増してシビアな状態が続く。ニジマスの供給不足が叫ばれている昨今だが、魚影は十分に濃い。前回の放流から時間が経っているせいか、魚たちがかなりスレているようだった。

 簡単に釣れないこそ、フライを追う魚影が見えると胸が高鳴る。繊細なアタリを見逃すまいと意識を集中する。この感覚が心地いい。

 しっかりと水底まで沈めた小さなソフトハックル(フライ・毛鉤の一種)を引いてくる。リトリーブのテンポを変えつつ誘っていると、ようやくフッキングした。と同時に広い池を沖を目指してグイグイと走る! どうにかコントロールしようとしていると、喰いも浅かったようでバラしてしまった。さらにバラして3度目の正直! これまた随分と体力のある魚で、まったく寄せてくることができない。

長時間やり取りしたニジマス。感謝しつつ池に返す

 時間を測る余裕などなかったので不確かだが、15分以上はやり取りしていたような気がする。ロッドを保持する腕、肩がパンプして何度も左右を持ち替え、ようやく浮いてきた。水中で煌めく銀色の魚体はなかなか見事だ。祈るような気持ちで魚の機嫌を伺うように慎重にネットイン! 美しいニジマスに惚れ惚れしながらリリースした。

リリース直前、鮮やかな頬の色づきに見入ってしまう

 雨足がやや強くなってきた。午前券(13時まで)で釣りをしていて残り時間はわずか。再び吸い込むようなアタリを感じアワセた! かかった直後のダッシュは見事だったが、一度走った後は意外と諦めが早く、すんなりとネットに入ってくれた。やや年老いていたが、サイズは50cmを越すヒレも立派な太いニジマスだった。まるで残り時間の少ない僕を気遣ってくれたかのようだった。

 自然河川の禁漁まであとわずか。あと何回釣りに行けるのか、果たして大物と出会えるだろうか……。