日本アルプスの北部に位置する飛騨山脈は標高3,000m級の日本を代表する山々が連なる。一般的には「北アルプス」という呼び名で親しまれ、世の登山者憧れの山脈だ。ここには日本の標高第三位の奥穂高岳(標高3,190m)や槍のように尖ったピークが象徴的な槍ヶ岳(標高3,180m)をはじめとした、日本屈指の高山が多い。それぞれのピーク同士は繋がっていて、どこまでも続く荒涼とした稜線はハイカーの心くすぐる光景だ。

 主だった山の頂上は森林限界を超えているので山上からは大パノラマが望め、これぞトレッキングという眺望。景色だけでなく、色とりどりの高山植物が咲き誇るお花畑や夏でも溶けない雪渓など北アルプス特有の山歩きも出来る。そんな魅力溢れるエリアにおいて、今こそ登りたい! と熱く推薦する山を編集部が厳選して6座をピックアップ。1座ずつ全6回の連載としてお届けする。最終回となる第6回目は3,000m峰の「乗鞍岳」。山頂部までバスで行けるため子どもでも登れる山だ。自分のレベルに合わせてこの夏、チャレンジしてほしい。

■[長野県]乗鞍岳(のりくらだけ) 標高:3,026m  行程:日帰り

歩行時間:2時間45分
技術レベル:★☆☆☆☆
体力レベル:★☆☆☆☆
【オススメポイント】
1.最も気軽に行ける3,000m峰
2.山頂からは日本アルプスを一望
3.シャトルバスからの景色も楽しめる

●初心者に優しい高山

 北アルプスの中で、初級者でも登りやすい山の一番手に挙がるのが乗鞍岳だ。日本の3,000m峰は21座あるが、乗鞍岳は19番目の高山。北アルプス最南端に位置する独立山塊で、標高は3,026mという堂々たる山容。

 ここが、気軽に登れる3,000m峰といわれるのは、山頂部の畳平(2,700m)まで大型バスが通り、実際の登高標高差は300m余りしかないというのが理由だ。

登山口はすでに森林限界でルートも明瞭

 また、畳平から山頂までは、整備された道が続き、天候さえ問題無ければ体力の無い子どもでも1時間半ほどで登れる環境が備わっていることも「気軽」と言われる所以。

●シャトルバスで山頂まで

 畳平までは岐阜県側の平湯温泉か、長野県側の乗鞍高原からシャトルバスを利用。乗車時間は1時間余りだ。

 バス終点の畳平周辺には魔王岳(2,763m)、大黒岳(2,772m)、富士見岳(2,817m)とそれぞれ10分ほどで登れる山のピークがあり、こちらもオススメ。

 乗鞍岳は畳平から往復で3時間余りのコース。ただしザレ場もあるので、通常の登山装備は必須だ。

●ルートガイド

 乗鞍岳山頂へは、畳平から肩の小屋経由で約90分。不消ヶ池(きえずがいけ)を右手に見ながら整備された道を登っていく。肩の小屋を過ぎると斜度はきつくなり岩礫状の道となる。登り切ると祠がある剣ヶ峰(3,026m)に到着。頂上には飲み物等の販売を行う小屋がある。

 晴れた日は目の前に御嶽山、そして槍ヶ岳、穂高連峰、中央アルプスが近くに迫り、遠くに南アルプスや八ヶ岳の峰々までも一望。圧倒的な景観を堪能できる。頂上部は狭く、多くの登山者の写真撮影で列ができることも。

岩を突き上げてできた山頂には神社があり、荘厳な雰囲気を醸し出す 
山頂からは大パノラマの景色。眼前には権現池が見える

 下りは登ってきた道をそのまま戻る。肩の小屋では食事や休憩が可能だ。なお、強い日差しや、ガスの発生、雨風などの悪天時は想像を超える厳しい登山となる。高所登山であることを十分注意して臨みたい。

 春から夏にかけての乗鞍はサマースキーのメッカでもある。肩の小屋下の大雪渓やさらに下方の位ヶ原山荘付近は5月から7月にかけてスキー、スノーボーダーで賑わいを見せる。秋の紅葉時期も乗鞍スカイラインが素晴らしい紅葉スポットとなる。