「おわら風の盆」や5月の「曳山祭り」で、全国的に有名な富山県八尾町(やつおまち)にある山、白木峰(しらきみね)。その山頂部に咲くニッコウキスゲが数年に一度の当たり年だ。

■ニッコウキスゲの当たり年!? 風衝草原の絶景! 白木峰を行く

 白木峰は三百名山に数えられる標高約1,596mの山。標高はそれほど高くはない。だが、日本海から吹きつける強い季節風によって樹木が大きく育つことができない。そのため山頂部は高原風の地形となり、「風衝草原」と呼ばれている。その草原のニッコウキスゲが今花ざかりを迎えている。

青空・白雲・黄華。とてもよく整備されたトレイルが、夏山の絵を引き締めてくれた

 元々は白色や、うすピンク色のササユリの方が多かったらしいのだが、近年この時期の主役は完全にニッコウキスゲに変わってしまったようだ。雑木林やブナ林を抜けるといきなり展望が開ける。山頂からは360度の大パノラマが広がり、周囲の山々に黄色の花畑が彩りを加えている。この時期は特にドラマチックなのかもしれない。トレイルの終点、浮島のある池塘にはワタスゲとニッコウキスゲが、まるでバトンを渡すように水面に揺れていた。

 登り出しの標高が高くないため、夏場は暑さと勝負の登山となる。どのルートも行動時間、往復6〜7時間はかかり、ハードな山行となる。くれぐれも水とミネラル補給は十分な用意を。でも流した汗の分、出会える景色は格別だ。山頂や絶景スポットにはベンチなども整備されていて、ずっと景色を眺めていたくなる。そんな場所だ。

■事前に情報を集めてアプローチしたい

 そんな白木峰も、この時期の登山口のアプローチには注意が必要だ。複数ある登山口へは、ほとんどが狭路や未舗装路などが待ち構えており。土砂災害などで通行止めや工事、突然の交通事故などが多い道路事情だ。この日も、当初の計画を変更しての登山だった。くわえて最近の「戻り梅雨」による不安定な天候にも気を付けたいところ。交通手段もマイカーかタクシーに限られる。事前に最新の情報を入手して、複数のプランも計画しておきたい。

 トレイルは、とてもよく整備されていて気持ちよく歩ける。山頂直下に素敵な山小屋がありトイレもあるのだが、現在はトイレのみ使用できない。昔は八合目から気軽に登れたらしいが、現在は長い距離を歩いた人だけが、この景色を眺めることができる。八合目につづく林道の復旧工事が進んでるようだが、完了までには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

 秋はしっとりとした草紅葉が楽しめるという白木峰。もうしばらくは静かな山旅が楽しめそうだ。日本海から八尾の町を吹き抜け、ニッコウキスゲが咲く草原を駆け巡る風は、もう少しこのまま静かな山でいいよ。そう言っているような気がした。