中央アルプスとは、長野県の天竜川と木曽川に挟まれた南北約90km、東西約10kmの木曽山脈の総称である。中央アルプスの最高峰は、日本百名山に選ばれている標高2955mの木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)。木曽駒ヶ岳からは、今から約2万年前に氷河が浸食して形成したカール(半円形の窪地)を拝むことができる。このカールは、畳を1000枚敷いた広さがあることから「千畳敷カール(せんじょうじきカール)」と呼ばれている。

 そんな大地がつくり出した雄大な千畳敷カールを拝める木曽駒ヶ岳には、標高差950mの駒ヶ岳ロープウェイが架けられており、気軽に日帰りハイキングを楽しむことができるのだ。このロープウェイは950mにおよぶ日本一の標高差を誇っている。また、山頂駅である「千畳敷駅」は標高2611mにあり、ロープウェイの駅として日本最高地点である。

 今回は、日本一の標高差を誇る駒ヶ岳ロープウェイで日本一高い山頂駅から楽しむ木曽駒ヶ岳日帰りハイキングの魅力を紹介する。

■標高差、標高日本一の駒ヶ岳ロープウェイで一気に標高2611mまで

 木曽駒ヶ岳の登山口へは、標高差および山頂駅の標高が日本一を誇る駒ヶ岳ロープウェイで行くことができる。このロープウェイでは61人乗りのゴンドラで7分30秒、変わりゆく景色を楽しんでいる間に一気に標高2611m地点の千畳敷駅まで駆け上がるのだ。

 千畳敷駅では高山病にならないように到着後はしばらく体を慣らしておこう。自覚症状は無くとも、急激に高所に移動するため高山病のリスクがあるからだ。この千畳敷駅で30分から1時間ほど体を慣らし、トイレを済ませてハイキングに備えよう。体を高地に慣らす間、目の前に広がる岩峰や千畳敷カールを眺めて景色を満喫するのも良さそうだ。

ロープウェイに乗って木曽駒ヶ岳の登山口へ(写真:みう)

■千畳敷駅から木曽駒ヶ岳へ

 千畳敷駅からは花畑や高山植物を見ながら遊歩道を歩き、木曽駒ヶ岳を目指す。20分ほど歩くと傾斜のきつい八丁坂が見えてくる。残雪期は安全に登るため、軽アイゼンなどを装備する必要があるので、事前に雪の情報などをチェックしておこう。筆者は7月頃に訪れたが、まだ雪が残っていたので夏だからといっても油断は禁物だ。

八丁坂を登って木曽駒ヶ岳へ。残雪期は軽アイゼンなどを装備しよう(写真:みう)
乗越浄土にある宝剣山荘。ここからは中岳を拝むことができる(写真:みう)

 八丁坂は傾斜がきつく休憩できる場所は少ないが、40分ほど歩くと宝剣山荘が建つ乗越浄土と呼ばれる場所に着く。八丁坂は道中に見える青い空と迫力のある岩峰の景色が圧巻なので、登りがいがあるとも言える。乗越浄土まで来たら山荘のトイレ(有料)も使えるので、しっかり休憩しておくのが良さそうだ。 

 乗越浄土からは中岳(標高2925m)を経由して、木曽駒ヶ岳を目指す。中岳へ向かう途中、分岐がありショートカットコースで巻道へ進むことができるが、危険が伴うので避けて欲しい。巻道を避けて進むと、岩場を通るルートになり、巨石の立ち並ぶ中岳が見えてくる。この岩場は鎖場もあるので、安全には十分注意して進もう。

 岩場を30分ほど進むと中岳山頂にたどり着く。ここからは、中央アルプスの山々を眺めることができる。目的地である木曽駒ヶ岳も見られるので、しっかり拝んでおこう。

中岳へ続くルート 岩場を登っていくので十分注意しよう(写真:みう)
中岳山頂からの景色 中央アルプスの山々を眺めることができる(写真:みう)

 中岳から駒ヶ岳頂上山荘を経由して20分ほど歩けば、標高2956mの木曽駒ヶ岳の山頂に立つことができる。筆者が訪れた際、山頂に立つ頃は曇り空になってしまい景色を見ることはできなかったが、晴れていれば青空と中央アルプスの山々を眺めることができる。また、山頂には駒ヶ岳神社があり、山岳信仰の歴史を感じることができる。

木曽駒ヶ岳山頂 生憎の曇り空(写真:みう)