里のサクラが散り、ヤマザクラが咲く頃。いつも歩きに行きたいと思わせる場所がある。
新潟と長野の県境にあって、四方を山々に囲まれた鬼無里の里のそのまた奥にあるところ。それが「奥裾花(おくすそばな)自然園」だ。切り立った岩肌や岸壁が間近に迫る奥裾花渓谷を進んでいく(ドライブコースにも最適)と谷間が急に開けた展望地があり、その先が奥裾花自然園だ。
裾花川の源流域に広がる広大な湿原には、“尾瀬”にも負けないぐらいと言われている、81万株のミズバショウの群生地がある。残雪とミズバショウ、青空と新緑の四拍子が魅力的な四季彩ゆたかな春のトレイルを歩いてみよう。
■原生林! 春の息吹を感じる推しのトレイル
奥裾花自然園は広い駐車場がある観光センターが入口になっている。奥にある自然園の入り口まで、徒歩30分ほどの道のりだ。入口で入園料を払って先に進む。
ミズバショウの開花時期は(有料)バスも出ているが、道路の崩落などで奥まで行けないこともある。利用する場合は確認した方がいい。自然園までは近道もあり、戸隠連峰や堂津岳、中西山などの景色を楽しみながら歩けばあっという間だ。途中の池や水溜まりには、山に生息しているカエルの卵がたくさん見られる。足元もよく観察するとおもしろい。
休憩舎から先が湿原となっていて、よく整備されたトレイルと木道が続く。樹齢300~400年といわれているブナやトチの木の原生林。その樹下に流れる、雪解け水の流れの中に咲く白い可憐なミズバショウの姿は、深い山あいの土地に遅い春を告げているようだ。
原生林の間を流れる小川には厳しい冬を越えて、悠々と泳ぐイワナの姿も見られる。残雪きらめく山並みと、どこか海外を思わせるような野性味あふれる原生の森には、新芽がほころび、可愛らしい小鳥のさえずりが響く。この時期の推しのトレイルの一つだ。
■残雪・ぬかるみ! 足元はしっかりと準備をしていこう
周回できるトレイルは枝道や分岐が多いが、迷うことなく自分の好きに歩くことができる。見事な立ち姿のブナやトチの巨木も多い。ブナ林の中の群生地の「こうみ平湿原」と、開けた湿原といった印象を受ける「今池湿原」どちらも歩いておきたい。
キツイ登りや特に危険箇所はないが、残雪や湿原ということもあり所々ぬかるみも多い。足元は防水性に優れた靴や歩きやすい長靴がいいだろう。歩きやすいトレイルは一周して枝道を色々回っても、そんなに時間はかからない。春歩き始めにもぴったりなトレイルだ。