新緑が深緑に代わり、家から見える山の頂にも残雪がだんだんと少なくなってきた。もう少しすれば本格的に山開きの話が、そこかしこで聞こえるのではないだろうか?
巨木が素敵なとあるトレイルで出会ったハイカーの方から興味深い話を伺った。深い谷間にありつつも、剱岳が見える展望台のような山らしい。「立山杉」と呼ばれる杉の巨木が、それはそれは見事なたたずまいを見せているという。「こういう雰囲気が好きなら行ってみるといいよ。」と、その方は言っていた。
そんな何気のない会話から始まる山旅なんて素敵じゃないか。下調べをしていくと目指す山は、日本一急峻な「雪と岩の殿堂」剱岳へと続く、早月尾根の登山口付近にあるらしい。春から夏へと季節が移る曖昧なこの時期、しっかりと準備をして現地へ……。「日本にはまだこんなところがあったのか!」と思える感動の光景がそこにあった。
■中山と立山杉とは?
剱岳の登山口として有名な富山県の「馬場島(バンバジマ)」。その入り口駐車場が、中山登山口にもなっている。往復もできるが、ぐるりと一周できる登山道になっていて、登りで約2時間、下りで1時間半だ。登山道脇には、富山の県木にもなっている「立山杉」と呼ばれる杉の巨木が多数ある。この杉は立山周辺に自生していて、寒さや風、雪にめっぽう強い。登山道はその巨木を一本、また一本と訪ねて行くように切り開かれている。
また駐車場に隣接する「馬場島荘」の隣には「剱きらめきの森」という森があり、「立山杉」の巨木や巨岩の上に自生している「座禅桜」と呼ばれる巨木を擁するエリアがあり、山に登らなくとも「立山杉」と周囲の自然を感じることができるようになっている。