パックトランピング──。

 それはパックラフトという軽量なボートでの川下りを中心に、登山や釣り、自転車などを複合させ、その土地を感じながら自由気ままに旅をするというスタイルだ。今回は、ハイク×川下り×自転車という人力移動スタイルで、世界遺産「熊野古道」を舞台に流域を旅をしたときの記録をご紹介する。

■世界遺産「熊野古道」と清流「赤木川」     

 2004年に世界文化遺産に登録された熊野古道。熊野古道とは、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へと通じる参詣道の総称で、対象エリアは非常に広範囲に及ぶ。熊野川も世界で唯一の“川の参詣道”として世界遺産となっているのだ。

 その熊野川の支流に、僕の人生を変えた美しき川がある。その名は赤木川。川旅を始めたばかりの頃、僕はこの川の凄まじい透明度に度肝を抜かれて、それ以来“清流ハンター”となって、全国の美しい川を探す旅へと没頭していったのである。

20年前に初対面したときの赤木川の透明度

 今回のパックトランピングの旅は、その熊野古道と赤木川を舞台にしたものだ。その行程は、川旅道具一式を担いで熊野古道中辺路の「小雲取越」を踏破し(13km)、その先にある赤木川をパックラフトで下って(4.8km)、あらかじめ置いておいた自転車で熊野川沿いを遡上して(17.6km)スタート地点に戻って来る周回ルート。赤木川は鮎釣りシーズンになると釣り人が多くなるため、実行したのは鮎釣り解禁前の5月である。