■怪我から復帰! 最新の遠征はパキスタンの未踏峰に登頂!

全ての食材が凍り付く。細かく砕いて調理した。ルイベを狙ったわけではない  ©ISHII SPORTS

 2021年の年末に平出和也氏をパートナーとしてパキスタンの6,020mの未踏峰に登った。季節は冬。初めての挑戦で経験することも多くあったが、最初から冬の登山を計画していたわけではない。コロナ禍が落ち着いたタイミングが冬だった。ただひたすらに寒かった。

 ベースキャンプでも、気温は一度もプラスにならなかった。コックを雇って留守番をしてもらうわけにもいかず、水づくりや炊事も自分たちで行った。野菜や肉も石のように固く凍りついたが、根気強く分解し、油で揚げて食べた。冷え切った状況のなか食べる、高カロリーな揚げ物は美味かった。

 新型コロナウイルスの影響で、出国のために準備する資料や検査には時間も料金も労力もかかった。トランジットする国によっても規則が異なり、航空券も感染状況によってキャンセルが続出。帰国後の隔離も考えると、純粋に海外登山をする以外の負担が大きかった。

 そしてなにより、この状況で事故や怪我をすると大ピンチに陥る。すぐに帰国することができず、帰国しても治療が臨機応変に行えない可能性が高い。

■命名! Sami sar(サミ サール)

未踏峰サミサール。形の良い、端整な山であった ©ISHII SPORTS

 今回初登頂した山は、2015、2016年に福岡山の会がトライしている。しかし、途中で起きた事故により、隊員が亡くなっている。初登頂した山には名前をつけることができるのだが、今回の成果は我々だけで成しえたものでなく、福岡山の会のチャレンジがあったからこそだと思っている。この山に関わった全ての方が報われる名前にしたいと、パートナーと話した。2016年のトライで無念にも亡くなった隊員のサミ ウッラー カーン氏の名前をいただき、山の名前はSami Sar(サミサール)とした。

 年齢も上がってきたが、自分の登山人生をかけて登りたい山はいくつかある。一つひとつの登山を、トレーニングを、仕事を大切に過ごし、目標に向かって進んでいきたい。