<鵜匠が見てきた長良川の変化とは。中編に続く>
<古の水路と街を旅する。後編もチェック>

 「川旅」とは、川下りをベースに流域の風土・文化・歴史・人々の暮らしを丸ごと感じること。通常の川下りが“爽快なビール”なら、川旅は“芳醇な日本酒の味わい”だ。その土地を深く感じることで、旅はとても豊かなものとなる。そんななかで、今回はテーマありきの川旅にチャレンジしてみた。舞台は岐阜県の長良川。「清流長良川の鮎」という名称で世界農業遺産に認定された、日本を代表する大河だ。風情ある古い町並みと川湊(かわみなと・川の港)を繋ぐ、1泊2日の大人の川旅の模様をご紹介していく。

■世界農業遺産「清流長良川の鮎」

 川旅の計画を立てるとき、僕は「ここだ!」って場所にピンを立て、そこを中心に流域の面白そうな場所を絡めていくことが多い。ピンを立てるのは、以前から気になっていた川や景勝地、たまたま用事があって行く先だったりと様々。今回は場所ではなく「テーマ」にピンを立てて計画を進めてみた。選んだテーマは、世界農業遺産「清流長良川の鮎」である。

 まず世界農業遺産ってなんぞや?  って話だが、これは世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域が認定を受けるものであり、日本では現在11の地域が認定を受けている。その中の1つが、岐阜県の「清流長良川の鮎」だ。単純に「水がきれいだから!」とか、「鮎がうめえから!」とかで認定されるものではなく、人々の生活、水環境、漁業資源が密接に関わる里川(さとかわ)全体のシステムが評価されて、はじめて遺産認定となるのである。

清流長良川の鮎の紹介サイト(https://giahs-ayu.jp)

 そもそも長良川がすごいのは、流域に約86万人が暮らす都市部を流れる川でありながら、その清流を維持し続けていることだ。これは本流にダムがないからということもあるが、人々が暮らしの中で密接に川と関わり、大切にしてきたからこその奇跡ともいえる。

 今回、そんな長良川システムの中で着目したのが、「美濃和紙水運」と「鵜匠文化」である。かつて美濃和紙の水上運搬が盛んに行われていた上有知湊(こうずちみなと)から中川原湊間を川旅コースに設定し、その中で長良川の鮎文化の代名詞ともいえる「鵜匠文化」に触れていくというもの。このような“テーマ”で川旅の計画を立てられるようになると、川の楽しみ方の幅はグッと広がるのだ。