■狙いは「アニキ」メスは持ち帰り禁止!
調査の対象となるのは鮭のシロザケという種類だ。釣れた鮭は流れの中に係留し、メスが釣れた場合には漁協の方が回収するのを待つことになる。オスは持ち帰ることが可能だ。
当然狙いはオスの鮭。持ち帰って食べることもできるし、なんと言ってもその引きの強さ、厳つい風格には釣り人として憧れを抱く。なかでも大物は「アニキ」と呼ばれ、垂涎の的となっている。
■釣り人が少ない=鮭が少ない……
荒川の鮭たちの遡上のピークとされるのは、11月20日〜12月10日。この時期、日本海側の気候はひとたび寒気が入れば大荒れになる。取材日は2日間連続の雨がパラつく程度の空模様だった。風もほとんどなく、気温はこの時期としては異例の暖かさで、釣り人にはやさしいのだが……。
どんよりとした空の下でもわかる透明度の高さ。けれど遡上する鮭の姿はなかなか確認できなかった。産卵を終え、わずかな余生を過ごすメスたちや命尽きて川床に沈む鮭は見かけるのだが、肝心のフレッシュな魚が見当たらない。
遡上コースと思われる筋にフライを流すが、それこそ大海撈針(たいかいろうしん)の境地だ。サクラマスを狙うような、我慢くらべの釣りがひたすら続く。
少しでも魚影の濃いポイントを求めて、上流へ下流へ、右岸へ左岸へとさまよう。幸か不幸か、魚が少ないせいだろうか、例年に比べて釣り人も圧倒的に少ない。それでもときおり、竿を曲げている姿も見かけた。
上流の堰堤にある漁協のカゴの中に、立派な鮭が何本も入っているのを見つけた。「いない訳ではない。」気を取り直して釣りを続けるが、最後まで僕の竿は曲がることはなかった。
鮭に限らず、漁獲量が減少しているニュースが続いている……。理由は不明だが、地球規模の環境の変化が大きな要因となっている可能性もある。川さえ綺麗であれば魚が育つ。そんな時代は終わりつつあるのかもしれない。
鮭の帰ってくる環境をいつまでも残したい。切にそう願う。