なぜか年末年始になると富士見ハイクの気分になる。ということで、前編では丹沢山地の人気コース「塔ノ岳~丹沢山」を取り上げた。交通の便がよく、一年を通してたくさんのハイカーが訪れる人気の山である。

 一方で、今回は車でアクセスする山を「伊豆」と「富士山周辺」から取り上げたいと思う。交通の便がよくないが、それを乗り越えて訪れた人にしか味わえない特別な風景が待つ山だ。

前編をおさらい

■伊豆の奥地から富士山を遠望する「仁科峠~猫越岳」

これぞ伊豆! 笹の原の向こうに浮かぶ富士の姿が印象的だ

『伊豆は海山のあらゆる風景の画廊である――』

 これは『伊豆の踊子』で知られる川端康成が残した言葉だ。東伊豆は交通の便がとても良く観光に便利で、南伊豆は白いビーチと広大な太平洋に癒され、西伊豆は夕陽を浴びる複雑な海岸線に魅せられ、中伊豆は温泉と旅情に浸れる。

 それぞれのエリアにそれぞれの魅力があるけれど、中でも西伊豆の仁科峠と猫越岳なら、画廊の一番いい場所に飾られた日本画のような富士山の風景が楽しめる。

仁科峠から猫越岳方面の眺め。写真中央にぽつんと見えるのが「なべ石」

 この山は、天城峠から登るコースと仁科峠から登るコースがある。

 後者の仁科峠は交通量がほとんどなく、静かな山歩きが楽しめる。登り始め5分で到着する「なべ石」からの風景には、誰もが圧倒されることだろう。これぞ伊豆! といった笹の原がどこまでも続き、その先には浮かぶように笹にたゆたう富士山がある。この光景は、伊豆でしか味わうことができないものだ。

伊豆山稜線歩道の登山道は道標がしっかり設置してある

 独特な植生の中をゆく登山道はよく整備されている。交通の便がよくない山域だとはいえ、ハイカーには「伊豆山稜線歩道」として人気を集めるトレイルでもあり、そのためか、道標がわかりやすく設置されているのが好印象。

 東に傾いた木々が多いのは、西側の駿河湾から吹き上げる風の強さを物語っているのだろう。ちょっと異国のような雰囲気……たとえば奥秩父や八ヶ岳などとは異なった樹木のトンネルを潜り抜けていく道は、伊豆ならではの山旅気分を盛り上げてくれる。

 目的地の猫越岳は、標高1,035mの低山。山頂に展望はないけれど、すぐ近くに「猫越岳山頂の池」があるので立ち寄りたい。ひっそり鎮まる神の水辺の如く、ここはかなーり神秘的。かつては火口湖とみられていたそうで、この一帯は伊豆半島の火山群のひとつ「猫越火山」によって形作られたものだそうだ。

 なるほど、ここは太古の火山の“根っこ”なのだろうと想像を巡らせる。