登山道には雪がうっすらと積もっていた。雲ひとつない青空が広がっている。こんな日はきっとナキウサギも陽光を浴びに岩の上に出ているに違いない。ドキドキ、ワクワクしながら、はやる気持ちをおさえて生息地であるガレ場へ向かった。

■ナキウサギって知ってる?

大好物の植物のなかで幸せそうな姿が愛くるしい

 ナキウサギは、ウサギ目ナキウサギ科に分類される動物の総称で、日本では北海道だけに生息する。氷河期にシベリア大陸からやってきた種で、「生きた化石」とも呼ばれる。天然記念物にこそ指定されていないものの、なかなか見ることができない絶滅危惧種だ。

 ネズミの仲間に見えるが、実はウサギの仲間。その愛くるしい見た目は、究極の“もふもふ”! 悶絶しそうなほどキュートだ。さらに名前の由来になっている鳴き声も透明感があって美しい。

■どこに住んでるの?

山の斜面にあるガレ場。静かに待っていると、ナキウサギがあちらこちらから出てきてくれる

 氷河期の生き残りだけあって冷涼な気候でしか生きられず、北海道の大雪山系などの標高の高いエリアに生息している。住みかとなるのは、岩がゴロゴロとして隙間がいっぱいあるようなガレ場になる。すばやく身を隠せるので、外敵から身を守るのにも適しているのだろう。鳴き声が聞こえないと、ただ山を歩いていても見つけることは至難の技だ。

 食料となる植物がそばに生えていることも重要だ。その場で食べるだけでなく、冬に備えて住みかのなかに貯蔵するという。