長野県の白馬エリアは、ウインタースポーツの聖地として有名だが、北アルプスの後立山連峰が南北にそびえ、春から秋にかけては登山者がたくさん訪れる。なかでも、八方尾根スキー場はゴンドラやリフトを乗り継いで入山できる主要登山口のひとつだ。ルート途中の八方池は白馬三山を湖面に映す絶景ポイント。ここを目的地に訪れるハイカーも多く、山頂を目指さずとも白馬の絶景を十分に堪能できるのだ。

■ゴンドラ&リフトを使って一気に1830mの登山口へ

雪のないゲレンデを抜ける空中散歩も新鮮な体験。放牧された牛の姿が見られることも

 登山口までのアプローチ方法は2つ。メジャーなのが、山麓から八方ゴンドラリフト「アダム」と、2本のリフトを乗り継ぐ「八方アルペンライン」だ。所要時間30分ほどで、標高差1100m以上を一気にかせぐことができる。また、ゲレンデ中腹から「黒菱ライン」を利用してもいい。ゴンドラやリフトの山頂には、展望テラスや鎌池湿原などもあり、時間が許せばいろいろ立ち寄るのもおすすめだ。

■登りと下りで違うルートを楽しめる

岩がゴロゴロとした石の道から、奥に見える尾根沿いにゆっくり高度を上げていく

 登山の起点となる八方池山荘でひと息ついたら、いよいよトレッキングがスタート。八方池までの登山路は歩きやすく整備されており、本格的な登山よりもトライしやすい。整備された石の道と、木道があり、行きと帰りで違うルートを通れば違う景色を楽しむこともできる。尾根沿いを進む石の道は白馬三山の眺めが素晴らしく、高度を上げるごとに山の全景がどんどん広がっていくので足取りも軽くなる。尾根を巻くように登る木道ルートは、荒々しい五竜岳や双耳峰の鹿島槍ヶ岳などが見渡せ、途中に休憩できるベンチなどもあるので、のんびり歩くことができる。

■道標でもあり休憩ポイントでもあるケルン

八方池山荘から八方池までほどよい間隔で5つのケルンが設置されている

 ルート上には石を積み上げたケルンが数ヵ所あり、平坦なスペースにベンチなどが用意された休憩ポイントになっている。霧などで視界が悪いとき、ケルンは道に迷わないための道標となる。石の道や木道のどちらを通っても距離はほぼ同じぐらいで、最終的に第2ケルン(息ケルン)で合流する。このケルンが標高2005m。ここまでくればゴールの八方池まであとひと息だ。第2ケルンから先は少し登りがきつくなり、第3ケルンを越えてもうひと登りすると、尾根の窪みに水をたたえた八方池が現れる。

■自然が生み出す八方池の美しい景色

白馬三山が鏡写しになる八方池は絶好のビュースポット

 八方池は、雪に押し流された土砂の堆積物に、雪解け水や雨水が集まってできたもの。池越しに白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳が広がり、その峰々が水面に逆さに映る景色は、まさに自然が造り出した美しさだ。八方尾根から池までの道のりは、雪解けとともにとりどりの高山植物が咲く、花の宝庫として知られている。347種もあるという高山植物のなかには、「ハッポウ」と名のつく固有種も多く、春から夏にかけては可憐な花が目を癒してくれる。

 これから始まる秋の紅葉シーズンは木々の葉が色づき、ダケカンバの黄色やナナカマドの赤にハイマツの緑が混じり、山は錦の絨毯に覆われたような姿へと変貌する。山麓から八方池まで高低差があるため、ゴンドラの空中散歩、山腹のリフト、登山路によって紅葉の移り変わりを段階的に楽しめるのもここならではの魅力だ。

 

<おすすめルート>
八方池山荘→八方池→八方池山荘
(所要時間:3時間)