●近づく紅葉シーズン
標高1900mに位置する長野県、北安曇郡にある栂池自然園は、8月末から早くも秋の気配を感じ取ることができるようになってきました。標高が高いことから、季節は麓と比べて1ヶ月ほど早く過ぎていきます。これからやってくる秋山シーズンに向けて、「栂池自然園」の紅葉の魅力を順を追って、紹介していきたいと思います。
●草紅葉からスタート
一般的な紅葉のシーズンと言えば10月下旬から11月ですが、栂池自然園の紅葉は9月上旬から。まず湿原の中の草花が色付く「草紅葉(くさもみじ)」から始まります。夏を彩ったワタスゲやニッコウキスゲなどは黄色く、チングルマや低木のツツジの仲間は赤く染まり、笹の緑が入って見事な庭園を作り出します。足元が黄金色に染まった湿原と、まだ緑色の残る高い木々、北アルプスとの組み合わせは、湿原の紅葉の始まりと言うにふさわしい景色です。
また、この頃は夏に咲いていた花々の実がなりだします。草紅葉だけでなく、様々な実を見つけたり、それを目当てに来る鳥や小動物と出会える確率が高くなるのも、この時期の散策の楽しみでもあります。
●紅葉最盛期は10月上旬
栂池自然園の紅葉のピークは例年10月1〜2週目あたり。湿原と周りの木々が色づき見せる紅葉は、赤色のナナカマド・黄色のダケカンバ・緑色のオオシラビソ。その中にツツジやカエデなど他の木々の紅葉が入り、複雑でありながら鮮やかな色合いを作り出します。そして背景には雄大な北アルプスの白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳の「白馬三山」。白馬三山はそれだけでも絵になりますが、そこに紅葉と澄み切った青空と合わされば、言葉や写真では表せないほどの息を飲む美しさを見せてくれます。気象条件が揃えば、冠雪した白馬三山と紅葉の組み合わせが見られることも。
また、自然園入り口には「栂池山荘」と「栂池ヒュッテ」と2軒の宿泊施設もあります。朝日に照らされる紅葉、夕焼けに染まる紅葉、モルゲンロートの白馬三山と紅葉など、日中では見ることができない紅葉を楽しむことできるのも、宿泊者の特権と楽しみではないでしょうか。
●晩秋へ
紅葉のピークが過ぎるとダケカンバの白い幹が目立つようになります。園全体が単色になり、グリーンシーズンの締めくくりのような景色と、このあとやってくる雪の世界への気持ちが高まる幻想的な空間を作り出します。タイミングによっては一足早く降る雪の上を歩いたり触れたり、動物たちの足跡を観察することができるのも、高山の晩秋だからこそ体験できる特別な時間となります。
木道が整備された園内へ、ゴンドラ・ロープウェイで訪れることができる栂池自然園は、どなたでも気軽に高山の紅葉を楽しめます。あっという間に駆け抜けていく紅葉を見逃さぬ前に、ぜひ一度訪れてください。