天候不順が続く今年の夏山シーズンも終盤戦、山はすでに秋の気配が漂っている。霧の中を歩くことも多かっただろう。登山中に霧に巻かれると、よく「ガスが出てきたね」と言う。さらに「ガスってきたね」などとも……。けれど、いきなり「ガス」と聞くと、山登りをしない人はびっくりしてしまうかもしれない。

■山用語、「ガス」の正体とは?

槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳を望む

 そもそも霧とは何が違うのか? 何気なく使っている山好きのみなさんはその違いを知っているだろうか?

 答えは、“同じもの”。正体は非常に小さい水滴だ。霧とは視界の見通しが1km未満のもの。また場合によっては雲の中にいる場合もあるが、これも同じ状態になる。

 つまり「霧が出てる」と言っても間違いではないのだが、登山中は(霧と言うと)妙に素人感が出てしまう……。

 ただし同じ「ガス」でも「火山性ガス」はまったく別のもので、こちらは普段使っているガス同様に不可視、無味無臭でも有毒なものが多いので要注意だ。

■「ガス」は登山の天敵!

北アルプス北部にて

 「ガス(=霧)」は、濃くなると視界不良の原因となり、濃霧、ホワイトアウトとなるとリスクが高まる。道迷いなどの遭難事故を引き起こしかねない。雲の中にいる場合もあるので、条件が整えば雨に降られることになる。

 夏の炎天下では暑さを和らげてくれる場合もあるが、特にこれからのシーズンは気温を低下させて低体温症の引き金となることもある。

 何よりも登山の醍醐味である迫力ある山の景色を楽しめないのはいただけない。精神的にも不安になるだろう。ただ平地とは違い、山では地形的要因から発生率は相当高い。登山で避けては通れない存在、それが「ガス」だ。