■ついに憧れの魚を手にする!

遊漁券を取り扱っている「赤沼茶屋」。早朝営業しているのがありがたい。近くには駐車場もある

 まずは遊漁券を購入するため、早朝6時の営業開始にあわせて「赤沼茶屋」へ。すでに10人ほどの釣り人が開店を待っていた。ルアーよりフライマンが多い。さすがはフライフィッシングの聖地だ。

湯川の上流部は鬱蒼とした原生林の中を流れる

 前夜の雨でしっとりとした森に朝日が差し込んできた。あまりに神秘的な光景で思わずみとれしまう。夢にまで見たブルックトラウトに本当に出会えるのか、ドキドキしながらの一投目。流れ込みの脇の反転流にフライを流していくと、いきなり魚が飛び出した。

 出た瞬間からわかっていたが、それは小さな魚だった。それでも魚体には赤と黄色の点が。まるで宝石を散りばめたよう……。紛れもないブルックトラウトだった。あまりに小さく申し訳ない気持ちになるが、それでも念願の一本には違いない。感謝しつつそっと流れに還した。

 ふと不安になる。1本目がすぐに釣れる時は後が続かないことが多いのだ……。

体側の黄斑、赤点が特徴的なブルックトラウト

 けれど心配は無用だった。移動しながら目ぼしいポイントにフライを流すと、次々とブルックトラウトが飛び出してくれる。20cm前後のものがほとんどだったが、初めて入る川で、憧れていたブルックトラウトが素直に釣れてくれるのは嬉しい。

深いポイントには大きめのブルックトラウトが潜む

 ひとしきり上流部で釣った後、遊歩道をたどり下流で釣りを再開すると、尺(約30cm)サイズのブルックトラウトが飛び出してきた。

■今回の釣行で得たブルックトラウト釣りのポイント

雰囲気のいい緩やかな流れ。倒木の陰には、かならずと言っていいほどブルックトラウトが潜んでいた

 実際に釣りをしてみてわかったのは、見た目どおり性格もイワナに似ていること。流れのないところに静かに隠れている。湯川は川床が砂地か水草が生えているところが大半で、岩が少ない。そのため、倒木でできた陰とその深み、岸や岩盤のエグレや水草の陰に潜んでいるようだった。

 瀬でも釣れるという情報もあったが、この日は流れの緩いところを狙う釣り方で十分楽しめたので、試すことはなかった。

 毎日多くの釣り人に狙われ、スレているのかと思っていたが、そこまで神経質ではなかったので釣りやすかった。深さのある、流れが緩くなっているポイントにフライを送り込むと、躊躇することなく出てきてくれた。(もちろん不自然な動きを見せると魚にUターンされた)

森の中や湿原には、木道や整備の行き届いた遊歩道がある

 遊歩道が川のそばを通っているのも湯川の特徴だ。観光やハイキングをする人間の気配を普段から感じているのだろう、人影にもそこまで敏感ではないようだった。変に遠くからキャスティングするより、確実にドリフトできる距離まで(慎重に)近寄ってから狙う作戦が効を制した。そのほうが周囲の枝にフライを引っ掛けてしまうことも少ないだろう。

自然豊かな観光地だけにクマの生息地でもある
クマ対策としてカウンターアソルト(熊撃退スプレー)も携行した

 人が多い割にはクマもよく目撃されるようだ。クマに対する注意喚起の標識と鐘が設置されていた。当日も途中で出会った釣り人と情報交換した際、クマ出会ったと言っていた。しっかりと対策をして釣りに臨むのがいいだろう。