長野県と山梨県またがる八ヶ岳は、標高2899mの赤岳を主峰とし、南北に標高3000m級の峰々をいくつも連ねている。南から北へと、編笠山、権現岳、赤岳、阿弥陀岳、硫黄岳、天狗岳などの名峰が並び、夏沢峠を境に南八ヶ岳と北八ヶ岳と呼び分けている。南が岩壁の多い荒々しい山域なのに対し、北はたおやかな山に原生林や池が点在する穏やかな雰囲気になっている。目当ての山をピンポイントで登る旅もいいが、連なる名峰をピークハントしながら縦走すれば、八ヶ岳をまるごと堪能できて達成感もひとしおだ。

■観音平をスタートし、まずは編笠山を目指す

 八ヶ岳を南から北へと縦走する際、起点となる登山口が山梨県の観音平だ。ここは八ヶ岳南麓の代表的な玄関口のひとつ。JR中央本線・小淵沢駅からタクシーでアクセスするのが一般的だろう。観音平から入山したら、まずは八ヶ岳最南端の編笠山を目指す。コース前半はゆるやかな樹林帯が続き、押手川を越えたあたりから岩が増えてくる。山頂直下はやや急な登りだが、それを越えれば大展望のごほうびが待っている。

■南アルプスや富士山を一望できる編笠山

 編笠山の標高は2524m。名が示す通り編笠を伏せたようが丸みのある山容で、山頂には火山岩がゴロゴロと折り重なっている。南アルプスが近く、視界の開けた山頂からは甲斐駒ヶ岳、北岳、鳳凰三山などの名峰を一望できる。眼下には広々とした甲府盆地、その向こうに富士山の姿も見える。反対側の北東側にはこれから縦走する八ヶ岳の峰々が延び、自分の足でそれらを登頂ながら進むと思うと心が躍る。編笠山を下ったところある青年小屋は、赤ちょうちんがぶら下がり「遠い飲み屋」として常連から愛される山小屋。小屋から歩いて5分ほどの場所に「乙女の水」という水場もある。

■岩峰の権現岳や超ロングなハシゴを越えてキレット小屋へ

高度感のあるハシゴで鞍部へと降り、旭岳を抜けるとキレット小屋

 次は標高2715mの権現岳へと向かう。山頂は縦走路から少しはずれた岩峰で、古くから信仰の山とされていることから祠が祀られ、鉄剣も立てられている。権現岳から先の縦走路は下り道が続き、途中に「ゲンジー梯子」や「源治ハシゴ」などと呼ばれるハシゴがある。垂直にかけられた61段のハシゴはなかなかのスリル感だ。鞍部に降りたら展望の良い道を進み、急坂の樹林を下るとキレット小屋がある。