■ "スレ"た魚をどう攻略するか。知恵くらべがおもしろい!

竿抜けしてそうな場所を丹念に探るのがコツか

 いくら川が自然の流れそのものでも、やはりここは管理釣り場。入っている魚たちは、連日のように釣り人に狙われてすっかり"スレ"ている。源流のあどけない魚たちとは違って、簡単には鉤(ハリ)にかかってくれない。魚と釣り人との知恵くらべだ!

 今回は放流されてから2週間ほどしての釣行だったが、魚たちは(浮かせた毛鉤)ドライフライには相当目が肥えていた。流れてくるフライはじっくりと吟味される。「たまには遊んでやるか」と追いかけてくるが、直前でスルッと顔を背けて沈んでしまう。その点、(水面下で流す)ウェットフライへは不信感が少ないらしく、案外スタンダードなパターンで釣ることができた。

 釣り人は多いが、その分人影にも慣れているようで、かなり近づいても魚たちは逃げてはいかない。慎重に間合いを詰め、確実に(流れに漂わせる)ドリフトができる位置から流すと、難しいなりによく釣れた。

誘いに乗ってかかってくれたヤマメ

 残念だったのが、第1号堰堤の魚道工事の影響で激しい濁りが入ってしまったこと。初日は午後になってから濁りが出たが、2日目は休日だったにもかかわらず、釣り開始2時間で土砂で茶色く濁ってしまった。こうなるともう釣りにならない……。

■逃した魚は大きい……

 意気消沈して帰ろうと思って片付けていたら、同じく帰り仕度のルアーマンに話しかけられた。聞くと朝イチの最下流部で40cmクラスのイワナを釣ったらしい! しかも2本も! そんな話を聞かされると、引くに引けない。3時間ほど待っていると濁りが取れてきた。気を入れ直して再び釣りを開始する。ただし、水温は19.7℃。今度は高温すぎて、魚たちの反応はかなり渋くなりそうだ。

 案の定、たまにためらいがちなアタリはあるものの、まるで鉤に乗ってこない。そうこうしているうちに、朝方流したポイントへ。そこは良型ヤマメを釣った場所なので、しつこく粘ってみた。突然、魚影がギラリと光ったかと思うと、「ギュン!」と勢いよくフライをひったくっていった。

 「デカい!」そう認識したのもつかの間、強烈な引きで上流の落ち込みに逃げ込んだかと思うと、今度は僕の脇をすり抜けて一気に下流へ落ちていく。対応しきれずに、絞り込まれるロッドにただ耐えていると、スッとテンションが抜けた。無念のフックアウトだった……。おそらく40cmくらいはあっただろう。

川床の色をそのまま映したような麗しい色白のイワナ

 気落ちしつつも、移動して支流を探ってみた。細い流れ、まさに山岳渓流の趣でひんやりと涼しい。せっかくの大物をバラしてしまった僕の心をそっと癒してくれる。川床の白さを映したかのような、色白の麗しいイワナが迎えてくれた。型は小さかったが満足して竿を納めた。大の大人が魚が釣れた釣れないに一喜一憂する。そんなドラマが楽しいのかもしれない。