■レース専用! エイリアンシリーズ

2020-21モデルのエイリアンシリーズ。2021-22モデルはカラーデザインが一新される

 エイリアンシリーズは、SKIMO(山岳スキー競技)専用のブーツだ。レースで勝つために最新の技術を注ぎ込まれ続けている。現在のスカルパATブーツはこのエイリアンの開発からフィードバックされている部分が非常に多い。

 素材により3種類のモデルがあり、カーボングリアミドのエイリアン、アッパーシェルにカーボンを使ったエイリアン1.0、アッパーシェル、ロアシェルすべてフルカーボンのエイリアン4.0がある。ハイエンドモデルのエイリアン4.0は重さ610g(27cm)。もはや、登山靴よりも軽い。歩行モードの可動域はエイリアンが72°、エイリアン1.0が75°、エイリアン4.0は76°でこの可動域は、通常のATブーツにはない。

驚異の可動域76°を誇る、エイリアン3.0(2021-22モデルは4.0となる)

 人間の足首はそこまで前後に大きく動かないものだ。レース用のブーツがここまで動く理由はただ一つ。それは速く登るためだ! ちなみに、エイリアン4.0などは歩行時の前後の動きにまったく負荷がない。そのため走るように速く足を動かせるのだが、一方でブーツに頼って寄りかかることもできない。脚力が弱い、バランス能力が低いなどの人には扱えないブーツとなる。レースに出場する人はエイリアンから段階的にブーツをステップアップさせていく過程で、筋力、バランス能力が鍛えられていき、ハイエンドモデルが使用できるようになる。

 ATブーツに何を求めるかは、人それぞれだ。バックカントリースキーに対する志向によって変わる。まずはバランスのとれた用途の広いブーツが良いだろうが、パウダーだけでなく、春のザラメや長大なロングルート、テクニカルな登りのある山など、それぞれに合わせたATブーツが揃っている。

 かつてはATブーツにこのような広い選択肢はなかった。スキー場のゲレンデから山の世界に入る、バックカントリーユーザーが増えたことでATブーツは目まぐるしい進化を遂げた。今ではバックカントリースキーといえど、ひとつのブーツで何でもこなすのではなく、山行スタイルに合わせて2足、3足を使い分ける時代になってきた。異なるカテゴリーのATブーツを手に入れることは、それだけ山の世界を広げることにも繋がるだろう。

 3回に分けて紹介したATブーツ選び。来シーズンに向けてのブーツ選びの参考になれば幸いだ。