■朝マズメ(※4)は好調!

ドライフライを咥えたヤマメ

 5月の半ば。夜明け前の河原に立つと、なんと気温は2.7℃! さすがは標高が800m以上あるポイントだ。冷え込みが厳しい。ただし、水温は12.3℃と適温で、釣果は十分に期待できる温度だ。

 川霧の向こうで散発的なライズが始まった。薄暗いこともあり、正直魚たちがどんな虫、形態を捕食しているのかが分からない。まずは、#16(※5)のソフトハックル(※6)を流すと「パシャ!」とヤマメが跳ねた。だが、それは本物の虫を捕食したようでハズレ。流すレーンを少しズラすと今度はしっかりとフライを引ったくられた! 小ぶりだがさすがはヤマメ。元気に走り回って釣り人を興奮させてくれる。油断するとあっという間にフライを外し、流れに消えていく。このやり取りがたまらない。

 そのまま数本釣った後、今シーズン初のドライフライ(※7)で釣りたくなり、ラインを交換した。小さめのストーンフライが飛んでいるのが目立っていた。ドライフライだと#19~21あたりのサイズだろうか。自然に虫が流れるよう、慎重に極小のフライを流れに乗せた。すると、素直なヤマメたちがすぐに応えてくれた。20cmほどのサイズばかりだが、どのヤマメも美しいのが嬉しい。

 明るくなるとライズが収まってきた。けれど、ひとつ下流の淵を見ると流芯に沿ってわずかにライズが続いている。どうやらフライは小さいほど反応がいいようだ。#16程度だと無視され、#19でも食いが悪い。#21だと僕の目が追えない……。すっかり夢中になって釣り続けていた。日中は別の川を見に行きたかったので、楽しみは続きは夕方にすることにして、ポイントを後にした。

※4 魚たちの活性が上がり釣りやすくなる状況。朝方なら朝マズメ。
※5 フライのフック(針)のサイズ。数が大きいほどサイズは小さくなる。同じ番号でも、フックの種類によって形状や太さなども異なるので一概にサイズだけでは判断できない部分も多い。#20くらいになると米粒程度の大きさだ。
※6 フライ(洋式毛バリ)の一種。基本的には水面下で流す。
※7 フライ(洋式毛バリ)の一種。水面に浮かせて流す。 

■イブニングはライズパーティー!!

盛んに捕食するヤマメたち

 陽が傾いた頃にトラウトパークに戻ってきた。気温14.3℃、水温11.4℃だった。朝と同じ流れ込みのポイントへ様子を見に行く。穏やかな水面を観察していると、ポツリポツリとライズが始まったかと思うと、川面を飛び交う虫の数が徐々に増え、それに合わせるようにトラウトたちも盛んにライズし出した。ライズパーティーの始まりだ!

 虫たちが川面を乱舞している。その数は朝マズメのときの比ではなく、僕の顔にも次々と当たってくる。虫にまとわりつかれて嬉々とするのは、釣り人、ことにフライマン(フライフィッシング)だけだろう。ワクワクしてフライを結ぶ手が震える。この光景の中にいるだけでも十分すぎるほど幸せな気持ちになる。あっちのライズ、こっちのライズ。そこかしこ、足元から竿先くらいの距離でもライズが頻繁に起こる。

 「なるべく大きいのを狙いたい」つい目移りしてしまって集中できない。激しくジャンプする姿や着水する派手な水音に僕の興奮は高まっていく。無我夢中でヤマメを釣り上げてはそっと流れに返す作業を繰り返した。

 ふと上流に目をやると、流れ込みの脇でひときわ大きな魚体が跳ね残照に鈍く光る。前回来たとき、想定外の大物をかけてラインを切られていたことを思い出した。 すでに暗くなりすぎていたので、さすがに(見えないので)ドライフライを諦めてストリーマー(※8)を結ぶ。流芯の脇、誘うようにフライを見せつけながら流し込むと「ゴンゴン!」と確かな大物の手応え!

 「やった!」と思ったのもつかの間、あえなくフックアウトしてしまった……。

夕闇迫る中、ライズはどんどん激しくなっていた

 もう一度流すが、小さなアタリと共にフライにかかったのは、美しいが小さなヤマメ。

 「君じゃないんだけどね」と感謝しつつ、流れに帰した。この勢いで虫をたらふく食べていれば、きっとこの秋には大きくなっているだろう。立派に成長したヤマメたちに再会できることを楽しみにしている。

※8 フライ(洋式毛バリ)の一種。小魚を模したパターンが多い。水中を流す。

佐久漁業協同組合
TEL:0267-62-0764
URL:https://sakugyo.com
遊漁料金(2021年現在):遊漁承認証 6,500円 / 日釣り券1,300円 / 現場日釣り券2,000円