■早春のスプリング・エフェメラル!

カタクリの群落では時折、シロバナを見ることができます。カタクリは開花までに7~10年を要します。アリが種子散布をしている植物の一つです。角田山では登山口から咲き乱れ、登山道まで覆い尽くす勢いで驚きました
ナガハシスミレは天狗の鼻のように距(きょ)と呼ばれる部分が長く、別名テングスミレと呼ばれます

 「スプリング・エフェメラル」とは、春のはかないもの、短命、春の妖精などと訳されます。そう呼ばれる理由は、開花時期が短期間であること。春の女神と称される「ギフチョウ」など蝶が吸蜜に訪れることからです。春植物の代表的なカタクリをはじめオオミスミソウ、スミレ、キクサギイチゲ、バイモ、エンゴサク、ショウジョウバカマ、セツブンソウ、フクジュソウ、など優しい色彩の花々ばかりです。

 広葉樹が芽吹く前の早春、地表に姿を現す期間は4~5週間程度と短いです。早春に花を咲かせて他の植物が生い茂るころには葉を落とし、成長をやめて次の早春まで地中で休眠するのでまるで姿を消してしまったかのように見えます。植物の生き残り戦略は面白いですね。

 また、ギフチョウが吸蜜に訪れる期間は、年に一度ヤマザクラの開花する2週間ほどの春植物が咲き誇る期間だけです。とても希少な蝶なので優しく見守ってください。

■希少なオオミスミソウ保護

盗掘跡と思われる掘り起こしと樹木を切った跡

 オオミスミソウは、新潟県に群落が多く見られ、県の草花にも指定されて長年保存活動が行なわれています。取材当日も保存会のメンバーがパトロールしていました。ですが、残念ながら盗掘跡と思われる掘り起こし跡を数カ所確認しました。

 植物は、長年のさまざまな戦略でその地に文字通り根付いています。群落での多様性を保つためにもその地で咲き誇る姿が一番美しいです。ルールを守り観察してほしいものです。

*絶滅危惧種

 レッドデータリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリストです。国際的には国際自然保護連合 (IUCN)が作成しており、国内では環境省のほか、地方公共団体やNGOなどが作成しています。おおむね5年ごとに全体的な評価見直しがされています。

*アリ種子散布植物

 アリが好むサナギの匂い成分を含む糖などエライオソームが種子の一部についた種子を巣に運びます。アリは糖成分を食べると用のなくなった種子を巣の外に出すのです。他の昆虫などに食べられることなく確実に発芽させる戦略はすごいですよね。
 カタクリ、スミレ、カンアオイ、オオミスミソウ、バイモなど今回紹介した植物がアリに頼っているようです。